暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 30. I am always with you
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先するかなんて、考えたことなんかなかった。

 けど、もし護る気持ちを取るのなら、一護に利すること以外の全て――もちろん、「恋心」も含めて」――を排し、彼の隣に居なければいけない。告白なんてして私が弱くなってしまえば、一護の隣に立つ資格なんてないのだから。この世界に来てからできた剣士としての私が、そう囁く。

 好きな気持ちを取るのなら、万策尽くして彼に迫り、そして告白する。きっと私は恋に負けて弱くなるし、一護にも少なくない動揺を与えてしまうかもしれない。けれど、その行方はどうあれ、その選択は、一人の女子として、東伏見莉那として、とても眩しいものに見えた。

 今いる仮想世界の(リーナ)、向こうにいる現実世界の(りな)、どちらも私で、どちらも大切。片方を切り捨てることなんてできない。けど、もしどちらかを選ばなければならない状況になったら、私は――。

「――ふふっ、ごめんねリーナ。そんなに考え込まないで。ううん、どちらかを捨てようなんて、考えないで」
「…………え?」
「どっちを取るのが正解なのか、なんて分からない。けど、私なら訊かれたとき、多分こう答えちゃうから」

 アスナはにっこりと満面の笑みを浮かべながら、

「私は、どっちも取る。好きだから護りたくて、護りたいくらいに好きに決まってるんだから。
 たとえ二つを天秤にかけるような状況になっても、きっと私は二つとも掴み取る。愛の成せる技で護ることも、護ることで愛を伝えることも、きっと出来る。確固たる証拠なんてないけれど、でも胸を張ってそう言えるよ。
 だって、私は女子だもの。恋の暴論、ワガママなんてものは、私たちの特権でしょ?」

 そう言って、彼女はしばみ色の瞳を細める。
 その顔に常日頃の女剣士の面影はなく、ただ一人の十代女子としての素顔があった。

「えっと、私が何を言いたいのかって言うとね、そんなに真剣に考え込みすぎないで、肩の力抜こうよってことなんだ。
 どうあるべきとか何かしなきゃじゃなくて、どうありたいとか何をしたいか。そんな感じで、感情だけで自分にワガママを言っても良いと思う。特にリーナはいっつも真面目なんだから、たまには恋愛用の自分をお休みさせてあげよ? ね?」

 じゃないと疲れちゃうわ、そう付け加えて、アスナは茶目っ気のある笑顔を見せた。なんの気負いもなくて、けど言葉にできない説得力を感じて、私はただ首肯を返した。

 それを見届けたアスナは嬉しそうにまた笑い、ちらっと視界の端、おそらく時刻表示がある辺りに視線を走らせた。

「――うわっ、時間ちょっとヤバいかも。ごめんねリーナ、私このあと出掛けなきゃいけないの」
「そう。じゃあ、またね。今日はありがと」
「ううん、いいんだよ。頑張ってねリーナ、キリト君の妻として、
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