Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 30. I am always with you
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てしまおうか。そうすれば、きっと楽に――いや、それは、それだけは絶対駄目だ。
もし私が告白すれば、それの成否に関わらず私が弱くなるのは目に見えているし、何より一護の心に要らない負荷をかけてしまう。いつもぶっきらぼうでも根の優しい彼なら、きっと真剣に考えてくれる。
そのことで彼の重荷になってしまうことが、何よりも怖かった。攻略組最強の剣士に、そして、私の大好きな人に、「楽になりたい」なんていう自分のわがままで迷惑をかけたくなかった。
けど、じゃあこの気持ちの行き場はどうすれば――。答えの見つからないまま、惰性でさらに足を踏み出そうとして、
「――リーナ?」
声が聞こえた。
一護の声じゃない。もっと透明な、澄んだ女性の声。その声に私は立ち止まり、ゆっくりと声のした方へと振り返った。
そこにいたのは血盟騎士団副団長、アスナだった。一時休団中とは聞いていたけど、確かに騎士服は着ていない。セーターにロングスカート、ブーツというシンプルな服装をしている。お洒落好きな彼女にしては落ち着いた格好だけど、案外よく似合っていた。
「どうしたの? 貴女が迷宮区とレストラン以外にいるなんて、珍しいじゃない」
「……特に理由はない、ただの散歩」
「一護は?」
「分からない。用事で出掛けてる」
首を横に振りつつそう言うと、アスナの柔らかい微笑みが心配そうな表情へと変化した。
「……ひょっとして、一護と喧嘩でもしたの?」
「違う」
「一護の前で、何か失敗した?」
「違う」
「じゃあ、何があったの?」
「何も」
「嘘。何もなかったなら、そんな顔になるわけないじゃない」
「本当のこと。本当に、何も、なかった」
……そう、何もなかった。
ただ、いつもと変わらない、よくあることがあっただけ。「何かある日」が「何もない日」になっただけ。だからこそ、こんなに気持ちが暗くなっているのだから。
アスナは暫し私の顔を見つめていたけど、私がそれ以上何も言う気がないのを悟ったのか、そっか、とだけ言って視線を切った。
そのまま、私たちの間に沈黙が降りる。風で木の葉の擦れる音が、やけに大きく聞こえてきた。
やがて、アスナが沈黙を破った。
「……ねえ、リーナ」
「なに?」
「一護のこと、好き?」
「好き、大好き」
一拍も間を置かず、即答する。仲の良い女性陣にはとうの昔にバレている。今更隠すこともない。
「そっか。じゃあさ、リーナ。もし、その『一護を好きという気持ち』と、前に言ってた『一護の心を護りたいという気持ち』、どちらか一つを選ぶとしたら、貴女はどうする?」
「……それは……」
答えに詰まった。
護る気持ちと好きな気持ち。言われてみれば、どちらを優
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