諺
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「 風が吹けば桶屋が儲かるらしいですよ 」
「 ...いつの時代の話ですか? 」
雲ひとつ無い晴天の下、女神様は今日も唐突だった。
「 諺を知らないんですか? 」
「 いや...一応義務教育は受けてるのでそのくらいは分かりますが、なんで急に 」
「 昨日テレビでやってました 」
「 そうですか... 」
「 なんでも、風が吹いたら砂埃が舞って、失明する人が多くなって... 」
「 現代はコンクリートで舗装されてますが 」
「 三味線引きが増えて、猫が減ってネズミが増えて... 」
「 そのまま入院ですね 」
「 雨漏りがひどくなるので、その雫を受けるために桶が売れるらしいですよ 」
「 さすがに鉄筋コンクリートで雨漏りは無いと思いま... 」
「 あ・な・た・? 」
「 ...はい、ごめんなさい 」
おっかねぇ...
「 でも今時そんなことおきないと思いますけどね 」
「 分かりませんよ? もしかしたら桶屋がほんとに繁盛するかもしれないですよ 」
「 いや、そもそもこの現代に桶屋なんて... 」
「 そういうのはやってみてから言ってくださいね? 」
そう言って女神様がなにやら小声で呟き始めた。気付けばさっきまでの晴天はどこかに消え、上空には低い雲が流れている。
「 ...マジすか 」
「 『百聞は一見に如かず』ですから 」
そして吹き荒れる猛烈な風。
「 風、強すぎませんか 」
「 このくらいはやらないと現代では効果が無いかと 」
いやいや待てい。強風通り越して暴風ですよ、これ。というかもう竜巻ではないかと思うほどの風が窓の外で吹き荒れている。そのあまりの強風に隣家の窓ガラスは割れ、中から40歳くらいのダンディが転がり出てきた。
入浴中に急に窓ガラスが割れたのに慌てて出てきたらしい。その姿に女神様の視線は釘付けである。入浴中で一糸纏わぬ姿だったダンディは慌てて近くに落ちていた物を拾い、こちらの期待に違わず自身の聖域を隠しながらこう言い放った。
「 ...ふぅ、アブねえ。近くに桶があって助かったぜ! 」
こちらを向いて、何故かドヤ顔の女神様。 解せぬ。
「 どうですか? 」
「 いや、桶屋関係ないですよね 」
その後、この女神様による天変地異を阻止するために過去に跳んだのだった。
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