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魔法少女リリカルなのはStrikers〜誰が為に槍は振るわれる〜
第一章 夢追い人
第8話 彼の来た理由―後編
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 風に乗って聞こえてきた微かな声に、なのは達の間に緊張が走る。
 今でもまだラディのことが心配だ。
 だがそれ以上に、これから彼が見せるものへの期待がその心配を飲みこむほどに強かった。

 心配と期待がないまぜになった視線を受ける中、ラディはセラフィムの石突をコツンと蹴り、その巨体を自分の方へと傾けた。
 支えを失い徐々にスピードを増しながらラディの方へと落ちていくセラフィム。その様は柱を壊され倒壊するビルを思わせた。
 しかしビルの下敷きになる少年は、未だ動かず眼下で蠢く敵をただ静かに見下ろしていた。
 その様子に後ろで黙って見守っていたなのは達の顔から血の気が引く。
 あんな重い物が倒れこんでくればどうなるか――そんなこと、考えるまでもない。 
 悲鳴を上げようとする者、ラディを突き飛ばそうと飛び出す者。後ろで見守る皆がそれぞれに動き出そうとした。
 だが、声も、足も、その場から動くことはなかった。

 ラディは未だ、笑っていた。

 なにがそんなに楽しいのか、ラディは笑っていた。
 その不気味とも不敵ともとれる笑みが、なのは達を魅了し動きを止めさせる。
 その間にもセラフィムは落ち続け、その巨体がラディの肩に触れる。
 肉を打つ生々しい音が号令だった方のように、不気味なほど静かに立っていた少年が動き出す。
 肩から伝わる重みを支えきれない背中が悲鳴を上げ、その上に載っていた頭諸共前へと落とす。
 背骨を走る重みは腰骨へと伝わり、深く深く腰を落としながら太腿を軋ませ、ラディの右足を前へと弾いた。
 
 あと一秒。その一秒でラディの身体はセラフィムの重さに押しつぶされ、全身の骨を砕いただろう。
 だがその一秒が来ることはなかった。
 その一秒が来るよりも早く、ラディの姿がなのは達の前から忽然と消え、音もなく川辺に降り立っていた。

 奇術かなにかのような目の前の状況に理解が遅れ、言葉を失い一瞬固まるなのは達。
 しかしこれから襲われる側のスライム達は突然眼前に現れた敵に驚くことなく、ラディが着地すると同時、身体を小刻みに震わせた。
 これまでのゆったりとした震えとは違う新しい動き。恐らくは彼らが戦闘態勢のときのみに見せる動きだろう。
 ラディはそれに臆することなく、一度宙へと身を躍らせながら身体ごと槍を大きく回し勢いをつけ、スライム達へと駆け出した。

 風すらも置き去りに川辺を疾走するラディ。対し不気味に体を震わせ待ち受けるスライム。その両者の距離は瞬く間に縮まり、そしてラディの間合いまであと一歩という所で、震えていたスライムの動きが止まる。

 そして、最後の一歩の距離が詰まったその瞬間、ラディは地を踏み砕きながらスライムへと躍りかかる。
 だが、ラディの槍が届くよりも速く、スライム達
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