第九十七話
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発の空気が流れたように感じられたが――すぐにその空気は霧散する。ウンディーネの青年は踵を返して出て行こうとすると、その前に店前に陳列されていた武器を眺めていた。
「いい武器だな。今度は客として来よう。……行くぞ」
最後の言葉はこちらにではなく、武具店中を舐めるように睨んでいた、他のプレイヤー集団への言葉だった。ウンディーネの青年は一礼とともに武具店を出て行き、他のメンバーもそれに続いていく。扉が閉められて数秒後、静かになった武具店に小さく息を吐く。
「ルクス」
「……ありがとう、ショウキさん」
もう大丈夫だろうとルクスの名前を呼ぶと、カウンターの下からルクスと銀髪の少女が這い出てくる。やはりどうにも窮屈だったようで、銀髪の少女は大きく伸びをしていた。
「とってもスリリングな体験だったわ。ありがとう……まったくお忍びで来てるのに、スメラギったら過保護なんだから」
「……そろそろ事情を説明してくれ、ルクス」
先程のウンディーネの青年はこの少女のお付きか護衛役であり、それを嫌ったか嫌がったこの少女が逃げだし、居合わせたキリトとルクスがそれを助けた。そして二手に分かれた後、ルクスは近かったここに逃げ込んできた――といったところだろうか。ルクスの説明も大体そのような流れであり、肝心なのはこの銀髪の少女のことだけだった。
「ああ。この人は……ショウキさん、知らないかい?」
「え?」
自信満々な顔で胸を張る銀髪の少女の顔をよく眺めるが、確かにどこかで見たことがあるかもしれない。とはいえ、一部の例外を除いてランダムでアバターが生成されているこの世界において、顔を見たことがあると言ったとしても……
「どこかで見たことがある、ような……」
「ごめん、もういいわ。そういう微妙な反応が一番ショック」
「……彼女は人気アイドル、なんだ」
しなしなとヘコんでいく銀髪の少女を見ながら、気の毒そうな顔をしたルクスが注釈を入れる。そう言われてみると、テレビで見たことがある顔だったが……現実と外見がほとんど同じ、ということは。彼女も俺たちと同じ――
「……違うよ。あのゲームには彼女は行ってない」
――SAO生還者なのか、という考えをルクスが小さく否定してきた。当の銀髪の少女は武器が並んだ陳列棚を、まるでケーキでも入っているかのように眺めていた。彼女に聞こえないように、SAO生還者でないと断言したルクスを追求する。
「同じような顔なんじゃないのか? だったら……」
「私たちと同じようにするのも容易いと思うよ。彼女ならね。それに……」
ルクスは言いにくそうに顔を伏せた後、さらに小さい声で呟いた。彼女が恥ずかしそうに喋る時の癖のようなものだ。
「……ファン、な
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