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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 4
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 頭を抱えてうずくまった全裸の女神が。
 ほぼ元通りになった翼を広げ、振動で烈風を叩き付けてきた。
 吹っ飛ばされるギリギリで踏み留まれたのは良しとして。
 カールにまで届いてないでしょうね!?
 こんな圧力、揺れやすい木の先端に居たら、もろに影響が…………

 うん。なさそうだ。
 歌はまだ続いてる。

「おのれ……おのれ、悪魔と人間! よくも私の力を…… っ!?」

 血の涙でも流すかってくらい鋭い視線がいきなり緩み、ふっと上向いた。
 その先で。

「へ……? ちょ、カール!?」

 厳かで流麗な調べをがらりと衣替えして。
 子供向けの能天気な歌を、弾むように口ずさみ始めたカール。
 落ちない為の工夫なのか。
 降ろした枝より数段下に移動して。
 幹に寄りかかって足を投げ出し、両手で陽気な拍子を打ち鳴らしてる。

「手をつないで踊ろう、僕と君で踊ろう
ほら、ごらんよ、みんなも、楽しそうに笑うよ」

 ぱん、ぱぱん。
 ぱん、ぱぱん。
 軽快な拍子で、にこにこと嬉しそうに……って

 こら!
 歌には違いないけど、そういうんじゃなく!

「声を合わせ歌おう、みんな、ともに歌おう
犬も鳥もウサギも、楽しくなきゃ損でしょ」

 損得の話じゃねぇ!!

「……あれは、ふざけてるのか?」

 女神が呆然としてる。
 あー……すっかり元通りになってるわね?
 やっぱり、どうせ視界に入れるのなら、醜いより美しいとか可愛いほうが断然良いわー……
 でもないっ!

「カール! あんた、その歌、何!?」
「えー? だってその人ー、美しい音は嫌いって言うからー。楽しい歌なら良いのかなー? って思ってー」
「誰がコイツの要望を聞き入れて歌えと言ったのよバカああーッ!!」

 今はそんな、のんきな場面じゃなかったでしょうが!
 空気を読め、空気を!

「……真面目、だったのか……」
「ええ。あれは素で大真面目だと思うわよ」

 なんか再開してるし。
 人の話を聞けよ!
 いや、私は悪魔だけど!

「楽しそう、だな」

 楽しそうにしてて良いのかと、全力で突っ込みを入れたい。

「楽師を目指した理由が、『故郷に娯楽を広めたい』ってことらしいから。あいつの方向性としては、何もブレちゃいないんでしょうね」

 ただ、時と場面は選べ。
 にっこにこと、本当に……さっき見せた真剣な表情は、どこへ消えた!?

「あの子も、そうだった。ただ皆で一緒に笑っていたくて、地上へ降りて。なのに、神々は言い分も聴かず、ならぬならぬの一点張りで。しまいには、親友である私に、無理矢理、あの子を、殺させた……!」

 カールを見上げる目に、燃え上がるような憎しみ
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