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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 4
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を見ると、私には使えないと思ってたのかしら。
 残念ね。自分でやるのが(すこぶ)る面倒臭いってだけ!
 アンタの音、きっちり元に戻してあげる。料理はそれからよ!
 「いやだ! 美しい音は嫌だぁあ!!」
 ぐわんぐわんと反発する振動を連発させても無駄。カールの歌は空気の揺らぎも整える力よ? 歪みなんかはうってつけの獲物だわ。
 ほら、アンタの本当の姿が少しずつ輪郭を取り戻してる。
 元はちゃんと白かったのね、翼。
 良いじゃない? 薄く桃色が混じる白金色の髪なんて滅多に無い美しさよ。鮮血の赤が似合う白い肌も、とっても柔らかそう。
 人間年齢なら二十代前半の若々しい身体、幼さを残す顔立ち。白銀の雪を思わせる目は、冷たい色の割りに可愛い部類の丸型ね。
 肉団子にしておくのは勿体無い、深みがある鈴の音が響き出す。
 「いやだ……戻りたくない! 神なんかに戻りたくないッ!」
 「! 危な……っ!?」
 全裸で蹲まった女神が、ほぼ元通りになった翼を広げ、振動で烈風を叩き付けてきた。
 吹っ飛ばされるギリギリで踏み留まったのは良いとして、カールに届いてないでしょうね!? こんな圧力、揺れやすい木の先端に居たら、もろに影響が……無さそうだ。歌はまだ続いてる。
 「おのれ……おのれ、悪魔と人間! よくも私の力を…… ッ!?」
 血の涙でも流すかってくらい鋭い視線がいきなり緩み、ふっと上向いた。
 その先に
 「へ? ちょっ……カール?」
 厳かで流麗な調べをがらりと衣替えして、子供向けの能天気な歌を弾むように口ずさむカール。
 落ちない工夫なのか、幹寄りに座って足をぷらぷらと遊ばせ、陽気な手拍子付きで体を揺らしてる。
 「手を繋いで踊ろう、僕と君で踊ろう。ほらごらんよ皆も、楽しそうに笑うよ」
 ぱん、ぱぱん。ぱん、ぱぱん。
 軽快な拍子でにこにこと嬉しそうに……ってこら!
 歌には違いないけど、そういうんじゃなくッ!
 「声を合わせ歌おう、皆共に歌おう。犬も鳥も兎も、楽しくなきゃ損でしょ」
 損得の話じゃねぇッ!
 「……ふざけてるのか?」
 女神が呆然としてる。
 あー……すっかり元通りになってるわね。
 やっぱり視界に入れるなら、醜いより美しいとか可愛いほうが断然良いわー……でもないッ!
 「カール! あんた、その歌、何!?」
 「えー? だってその人、美しい音は嫌いって言うからー。楽しい歌なら良いのかなーって思ってー」
 「誰がコイツの要望を聞き入れて歌えと言ったのよ、バカーッ!」
 今はそんな呑気な場面じゃなかったでしょうが!
 空気を読め、空気をッ!
 「……真面目、だったのか……」
 「ええ。あれは素で大真面目だと思うわよ」
 なんか再開してるし。
 人の話を聞けよ!
 いや、私は悪魔
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