暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 4
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


「つーか、グチャグチャすぎ! 音以前に、生物の外形としてどうなのよ、それぇっ!?」

 醜い、醜い、醜い、醜い!
 悪魔の感覚じゃ、視界混入・即・滅殺対象よ!?
 要するに、コイツの正体は『神』なんでしょうけど!
 嫌よ、私!
 こんな醜悪な肉塊が!
 創世期からずーっと私達を脅かし続けてる天敵の一員だなんて!

 仮にも悪魔の敵なら!!
 美しい容姿と、それに相応しい気位の高さを要求する!!

「せめて手足くらいは整えて出直しなさい! 不味そうな肉団子と戦っても全然楽しくないのよ!」
「うるさい! 喋るな歌うな黙れ人間と悪魔ぁ! 消えろキエロキエロ! 美しい音は例外なくすべて消えてしまえぇええーっ!」

 カールの『波』に堪え切れなくなったのか。
 顎を外す勢いでガバッと口を開き、私に向けて不快な振動を飛ばす。

「やかましいのはそっちのほうでしょうが! この、神の出来損ないめ!」

 あえて乱された『波』を回避するには?
 同じ波長を返して打ち消すか、上回る物量で壁を作る。しかない。
 で。こんな汚い音と同調するなんて、死んでもお断りだから。
 私が取るべき行動は一つ。

 『波』に含まれた害を、私の耳が受容し切る前に、声を張り上げる!

「! ゃめ……やめろ! やめろぉおおォ──ッ!!」

 森中に拡がる、清浄な二つの『波』。
 醜い肉塊が両耳を押さえて悶え、仰け反る。

 私の『調音』で増幅させた、カールの『調律』。
 狂った身体には、よぉく効くでしょう?
 カールが歌ってから現れたところを見ると、もしかして私には使えないと思ってたのかしら?

 残念。カールの『調律』ほど強烈な効果がないのは認めるけどね。
 私は、自分でやるのがすこぶる面倒くさいってだけなの。
 アンタの音、きっちり元に戻してあげる。
 料理はそれからよ!

「いやだ! 美しい音は嫌だぁああああ!!」

 ぐわんぐわんと、反発する振動を連発させても無駄。
 カールの『調律』は、大気の揺らぎをも整える力よ?
 歪みなんかは、うってつけの獲物だわ。

 ほら。
 アンタの本当の姿が、少しずつ輪郭を取り戻してる。

 良いじゃない。
 元はちゃんと白かったのね、翼。
 薄く桃色が混じる白金色の髪なんて、滅多にない美しさよ。
 鮮血の赤が似合う白い肌も、瑞々しい果実のようで柔らかそう。
 人間の年齢に例えるなら二十代前半の若々しい女の身体、幼さを残す顔。
 白銀の雪を思わせる目は、冷たい色のわりに可愛い部類の丸型ね。
 肉団子にしておくのは勿体ない、深みを感じる鈴の音みたいな声も素敵。

「いやだ……戻りたくない! 神なんかに戻りたくない!!」
「! 危な……!?
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ