Side Story
無限不調和なカンタータ 4
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調律』。
個々の生命が放つ音を、寸分の狂いも残さず本来の音色に矯正する力。
「だから、あいつを殺したいの? 冗談でしょ。そんなの私が許さない!」
離れていた気配が急速に近付いてくるのを感じ。
片膝を突いた姿勢で、両手のひらを地面に乗せる。
アンタが予想通りの力を使ってるなら、これで相殺できる筈。
さあ。やれるものなら、やってごらん。
その汚い振動、カールには一つだって届けさせてやらないから。
口を大きく開き、大量の空気を体内に取り入れ……足下へ放つ!
「 !」
多分、昨日近くに居た時は、私が警戒して音を消したから、正確な位置を絞り込めなくて諦めた。
アンタの攻撃も、一撃の範囲をかなり限定してる。
手当たり次第に森を破壊するつもりはないってことだ。
じゃあ、狙った場所に攻撃が通用しなかったら?
殺したい相手を前に、手が届かないアンタは
「……ァァアアアアア────ッ!!」
表に出てくるしかない!
「単純でありがとう、もぐらさん! って、うわぁ」
カールの歌声に匹敵する大絶叫を上げながら。
私の十数歩先、正面の地盤を突き破って現れた、その姿は……
「えぐいっ!」
ひしゃげた漆黒の翼を背に生やした上半身は、辛うじて人型を保ってる。
けど、腰から下は、みじんぎりにした豚の生肉と、あらゆるゴミを丹念に捏ね回して雑草交じりの泥をまぶした団子に、ヘビの尾を付け足した感じ。
いや、ナメクジか?
見た目にヌメヌメしてるし。
「ウルサイうるさい煩い! その歌をやめろぉオオお────っッ!!」
鉤状に長く伸びた指先でぷっくり膨れ上がった後頭部とボサボサの黒髪を掻き乱し、ほとんど骨と皮だけで動く不気味な顔を苦痛に歪める。
紡ぐ言葉はどこまでも鈍く、くぐもった雑音。
いや、ここまで来たら騒音か。
「なんっっつぅ耳障りな!」
超重たい鈍器で力一杯耳を殴打される錯覚。
濁り方が、今までの比じゃない!
「アンタやっぱり、『音』で存在を改変してるわね!?」
世界のあらゆるものは、それぞれが異なる音を奏でる楽器だ。
体や精神の不調が音色に影響するように。また、その逆もあるように。
音そのものと器の形状は、切っても切れない関係にある。
コイツは、この騒音を出す為にカールの『調律』とは真逆の方向で自身の器を無理矢理ねじ曲げた、『音』の能力を持つ『何か』だ。
森の不快な雑音も、歪みに歪んだコイツが地中を徘徊して、周辺の振動を狂わせてたせいか。
なんっって迷惑な奴
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