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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 4
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はい、です。」
 何故か赤く染まった頬を、あさっての方向に逸らされた。耳も微妙に赤い。
 ……余計な行動されても困るし、従順な態度は歓迎するけど……時々見せる意味不明な反応は何なのかしら。今、視線を逸らすところだった? ローブがずり落ちてるんでもないのに、変なの。
 「じゃ、とりあえず…… !」
 追い掛けて来るだろう攻撃を避けるつもりで隣の木へ飛び移った直後、微かに空気が揺れた。
 これは自然の動きじゃない。不快だった森の雑音に近い波だ。
 目に映る変化は無いかと周辺を見渡せば、寝床だった枝が粉になって散る画をほんの一瞬捉えた。
 忽然と消失した木の根元には、やはり音も無く現れた深い穴。
 「……なるほどね」
 突然穿たれる穴。粉になって消えた木。どちらも音が聴こえない理由。もしかしたら、カールを殺そうとしてる理由も。大体予想が付いた。
 「ちょっと遠くへ跳ぶわ。口をしっかり閉じてなさい。じゃないと、舌を噛むわよ!」
 「え? んにょわっ!?」
 せっかく警告したのに奇声を上げないでよね! 気が抜ける!
 攻撃の時機と移動距離、速度を計算。強めに跳躍し、離れ過ぎず程好く近い地点の木に降下。天辺近くの細い枝にカールを立たせる。
 「わっ、わっ……」
 足場の高さと頼りなさの所為か、さすがに不安そうね。
 こいつくらいの重さなら簡単には折れないだろうけど、油断して滑り落ちないでよ?
 「此処で暫く、耳を塞ぎながら歌ってて。全身全霊を掛けた大音量で」
 「歌? 今?」
 「今」
 不思議そうなカールに頷き、私は地面へ飛び下りた。
 枝や葉っぱを絡ませた髪が肩に落ちたと同時に、透き通った波動が黒くなり始めた夕方の森に広がる。
 音の書き換え、か。
 本質をもっと正しく表現するなら……「調律」。個々の生命が持つ音を、寸分の狂いも残さず本来の音色に矯正する力。
 「だから、あいつを殺したいの? 冗談でしょ? そんなの、私が許さない!」
 離れた気配が急速に近付いて来るのを感じ、片膝を突いた姿勢で両手のひらを地面に乗せる。
 口を大きく開き、大量の空気を体内に取り入れ……足下へ放つ!
 アンタが予想通りの力を使ってるなら、これで相殺できる筈。
 さぁ、やれるものならやってごらん。
 カールには、その汚い振動一つ、届けさせてやらないよ!
 「         !」
 昨日近くに居た時は多分、私が警戒して音を消したから、正確な位置を絞れなくて諦めた。攻撃も、一撃の範囲をかなり限定してる。手当たり次第に森を破壊するつもりは無いって事だ。
 じゃあ、狙った場所に攻撃が通用しなかったら?
 殺したい相手を前に、手が届かないアンタは
 「……ァァアアアアアーーーッ!」
 表に出るしかない!
 「単純でありがとう
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