暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
流星の終着点
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で同じ方向に流れていた光点が、今度は自らの美しさを誇示するように乱舞を始めていて、それはまるで海の底から宇宙の星々を直接眺めているような、幻想的で、生命の神秘が垣間見える美しさを醸し出していた。

「……マップに位置は記録されず、か。事前情報とも一致するな」

 一足先に我に帰ったマサキが手元に呼び出した現在地には大きく《NO DATA》と表示され、ルート追跡機能を用いてここまでの道のりを辿ってみるも、記録はここに通じる横穴の前で途切れてしまっている。となると、ここは地図上には存在しない、いつ、どこに現れるかが完全に無作為(ランダム)な隠し部屋なのだろう。そして、その部屋を見つける唯一の道標(みちしるべ)こそが、あの流星群というわけだ。

「これだけ採掘ポイントが多いと、強化用の追加素材もここだけで賄えそうかな?」
「かもな。だが、その前に……」
「うん、解ってる。まずはボスを倒さないと、でしょ?」

 そんなエミの言葉をトリガーにしたわけではないだろうが、そうとしか思えないタイミングでフロア全体に変化が生じた。どこからともなく白い霧が漂い始め、フロアの床部分を中心部に向かって流れ込む。流れ込んだ霧は徐々にその濃さを深め、同時に人の形を成していく。一分と掛からずフロア中央に降り立ったのは、身体と顔をそれぞれ一枚布(キトン)とヴェールで覆った、身長五メートルはあろうかという巨大な女神だった。
 その頭上には、ピンク色のカーソルと三本のHPバー。そして、ボスモンスターであることを示す定冠詞付きの名前。
 《The Mist traveler Merope》――霧の旅人メローペ。それが、音もなく降臨した女神の名前だった。

「――愚か者共よ。我に更なる恥辱を強要するか」

 低くエコーのかかった、頭の中に直接響いてくるような声。ヴェールに隠された表情は読み取ることができないが、その声からは湧き上がる怒りが感じ取れた。無論、単なるプログラムでしかないこの女神に感情なんてものが備わっているはずがないのだが、腰に帯びていた直剣にゆっくりと手を掛け抜き放つ仕草は意思を持った何者かが動かしているとしか思えないほどに精緻だ。
 次の瞬間、部屋の空気が一瞬にして張り詰める。部屋を覆う鉱石と同じく青白い光沢を放つ両刃剣を、女神がマサキたちに向けたのだ。
 剣の放つ輝きの鋭さから、あの女神のドロップ品に高ランクインゴットが存在する可能性が高いことを目ざとく推察しつつ、マサキは蒼風を抜く。静まり返った部屋の中に、鞘と刃が擦れ合う音が二つ。

「とりあえずはモーションを見極めつつヒットアンドアウェイ、モーションが変わったら一旦様子見。基本的にスイッチはしないが、ポーションでの回復が必要になったら言え。他に何かあったら大声で叫べ」
「了解っ
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