アインクラッド 後編
流星の終着点
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つまりは、どこか決まった目的地が存在するということになる。
そしてその目的地は、何の前触れもなく現れた。
数多のクリッターたちがこぞって目指していたのは、特に何があるわけでもない、全く以って平凡な坑道の壁であった。傍目には何もないようにしか見えないが、天井を埋め尽くすほどに数の増えた光の筋たちは、そのポイントに差し掛かった途端一斉に進行方向を九十度変更して壁へ飛び込んでいく。
「どういうことだ……?」
マサキは眉を怪訝そうにひそめつつ、光が飛び込む辺りの壁に触れてみる。するとあろうことか、マサキの手は岩壁の感触を確認することなくすり抜けてしまった。そして、そのせいでハイドレートが低下したのだろう、どこからどう見てもただの岩壁だった光景がゆらりと揺らめき――一瞬のうちに、それまで存在しなかった横穴へと姿を変えた。
「これは……」
マサキがもう一度記憶を探るが、こんな横穴は見たことがない。一応マップと見比べてみるが、この横穴を探索した記録はなく。それどころか、この横穴の先は未踏破区画だった。が、それは明らかにおかしい。何故なら、マサキとエミは出発前、このダンジョンの全フロア踏破済みマップを購入していたのだから。
……となれば、もう可能性は一つしかない。この先に、求める隠しボスフロアが存在するのだ。
そこまで考えたマサキはしかし、嫌そうに顔をしかめていた。と言うのも、今回レアインゴットを欲しているのはマサキではなくエミであるから、目的を達成するためには彼女がこの中に進まなくてはならない。しかしこの場に彼女がいない以上、マサキが呼びに行く必要があるわけで。
「…………」
今のマサキにとって、その場所はまさに地獄だ。メッセージで場所だけ伝えるという案も、二人ともダンジョン内にいるため不可能。マサキだけが中に入り、入手したインゴットを彼女に渡すという選択肢も浮かんだものの、どの道最後にはエミと会う必要がある。
――要するに、詰み。万事休す。
実際そんな状況にでくわすと、人間というのは得てして自暴自棄になるものだ。そしてそれはマサキも例外ではなく、マサキの頭の中を徐々に後ろ向きの思考が支配しだす。
マサキがエミと会い辛いように、エミもまたマサキと会うのは気まずいはず。そして、マサキは彼女と疎遠になることを望んでいるのだから、気まずい雰囲気のほうが得だ。……であれば、このまま素知らぬ振りをしつつ帰ってしまうのが一番ではないか。メッセージが使えない以上、先に帰ることをエミに伝えられないが、パーティーを解消すれば彼女だって解るだろう。仮に解らなかったとして、彼女のレベルとプレイヤースキルであれば、この程度のダンジョンでどうにかなることはあるまい。
などと、完全に思考がマイナス方向へ振り切ってし
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