第一章
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ミーデル
スイスと聞いてだ、若林裕行は笑って友人の小野田信彦に言った。
「アルプスの少女はな」
「違うっていうんだな」
「あれはアニメだろ」
確かにイメージとしては強いがとだ、眼鏡の顔を笑わせて言う。黒髪は無造作な髪型だが短めにしてある。女の子で言うショートヘアではっきりした目の信彦と違い剽軽な感じがする。
「いいアニメにしてもな」
「実際はのどかじゃないっていうんだ」
「永世中立国でな」
「平和主義だな」
「どっかの学者さんがいつも喚いてるけれどな」
言っているのではなく、だ。
「それで日本もスイスみたいになれって言うと」
「スウェーデンみたいにっていうパターンもあるな」
「実際にやったらば」
「重武装国家だな」
「国民皆兵のな」
「そうなるな」
信彦も裕行にその通りだと返す。
「現実にやったら」
「ああ、どっかの学者さん知ってるのかね」
そのスイスの実態をというのだ。
「ああした人が一番嫌う国だろ」
「知らないで言ってるのかもな」
そのスイスの現実をだ。
「永世中立イコール平和主義とか非武装とか思ってな」
「何も知らないでか」
「言ってるのか」
「そういうのはな」
どうにもと言う信彦だった。
「俺もおかしいって思うさ」
「まして学者だからな」
「学者で勉強しないで言うとかな」
「全然学問的じゃないな」
「世の中そうした学者もいるんだろうな」
「おかしな話だな」
「全くだな、それでな」
「ああ、これからだな」
あらためてだ、裕行は自分の横の席にいる信彦に言った。
「このツアーでな」
「スイスに行くからな」
「そのスイスにな」
「出来ればな」
飛行機の窓からだ、信彦は飛行機の下の雲、白いそれを見つつ裕行に言った。
「女の子と行きたかったな」
「俺もだよ、スイスに行こうって思って申し込んだら」
「御前もいるなんてな」
「全く、顔を合わせるのはな」
それこそとも言う裕行だった。
「大学だけでいいんだけれどな」
「大学でもサークルでもツアーでも一緒か」
「変な縁だな」
「全くだ」
信彦は窓を見続けつつだ、裕行に応えた。
「御前スイス好きだったのか」
「いや、何処に旅行に行こうかって考えてな」
ツアーに申し込んだ理由もだ、裕行は話した。
「安かったからな、この旅行」
「それでか」
「申し込んだんだよ」
「俺と同じ理由だな」
「何だ、御前もかよ」
「ああ、安かったからな」
学生の旅行先の決め方としてよくあるパターンだった、このことは信彦も同じだった。
「こっちにしたんだよ」
「やっぱりそうか」
「国内旅行と同じ位だったからな」
「格安だったな」
「それならって思ってな」
「
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