アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 03
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た調子を隠さずにため息を吐くと、意外なことにアマリが口を開いた。
「なんだか儚い感じの人だったですね、サチ姉さん」
「ん、そうだね。 でも、怒ると怖いから気をつけてね」
「そうは見えなかったですよ?」
「前にキリトと一緒に悪ふざけしてたら怒られたけど、いやもう、本気で怖かったよ。 目が笑ってない微笑みで延々と《お話し》。 アスナさん以上に怖かったね、あれは」
その時のことを思い出して、僕は思わず身震いしてしまう。
あれはそう、僕が攻略組に復帰してしばらくした時のこと。 リズさんのところに遊びにいくアマリを見送ってから、僕はキリトと合流して《アインクラッドを外周から登っちゃおうぜツアー》を敢行したのだ。
結果は大方の予想通り失敗。 80mほど登ったところで侵入不可能領域を知らせるメッセージが眼前に現れた。 いきなり表示されたことの驚いた僕とキリトは手を滑らせて、そのまま落下することになった。
もちろん、落下中に転移結晶を使って事なきを得たわけだけど、それを知ったサチ姉(観客だった黒猫団のメンバーがリークしたらしい)は、僕たちがキリトのホームに帰るなりハラハラと泣き出してしまって、それをどうにか落ち着かせたら今度はお説教。
無事ではあったものの危険なことをした僕たちを心配してくれたサチ姉に反論できるわけもなく、僕とキリトはひたすら謝罪の言葉を繰り返したのだった。 ちなみにその日のキリトの晩御飯は《はじまりの街》で売っている丸パンひとつだったらしい。
「……それはフォラスくんたちが悪いです」
そんなあれこれを聞いたアマリの第一声は、アマリにしては珍しい、明らかに呆れた調子のお言葉だった。
サチ姉に対してそうだったように、返す言葉がないので苦笑いを浮かべつつ肩を竦める。 ちなみにアスナさんは言うまでもなく絶対零度の視線込みの呆れ顔だ。
と、肩を竦めながら視線を向けた先で、キリトがメニューを開いていた。
デュエル開始まで10秒を切った状況で何を? そんなことを考えていると、キリトの背に新たな剣が追加される。
「なっ……」
キリトの愛剣。 《エリュシデータ》と《ダークリパルサー》。
今回のデュエルで使わないと宣言していたそれら二振りの剣を、キリトは公衆の面前で音高く抜き放つ。
歓声や野次に包まれていたコロシアムの空気が、その二刀を前に困惑とどよめきとに変わった。
「あの馬鹿……」
思わず口から溢れた罵倒の言葉は、けれど、誰の耳にも届かなかっただろう。
キリトとヒースクリフとの間にデュエル開始を告げる表示が瞬き、瞬間、キリトは10mほどあった距離を駆けた。
キリトは勝てない。
二刀流を使おうが、たとえどんなスキルを使おうが、現時点での
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