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第一章
キッズストリート
十九世紀イギリスのロンドン。当時この街は世界一の大国の押しも押されぬ首都だった。まさに繁栄の絶頂にあるとされていた。
工場が立ち並びそこから煙が沸き起こる。そして人々はその中で汗水垂らして働いていた。
「やっと俺達の生活が言われるようになったな」
「ああ、本当にやっとだよ」
「全くだ」
その働いている労働者達はパブでこんな話をしていた。飲むのは当然エールだ。それをがぶ飲みしながらそのうえで話をしていた。
「何だかんだでな」
「これまで凄かったからな」
「だよな。何時倒れるかわからない位な」
「洒落にならなかったよ」
「女房やガキが働いて」
賃金の関係でそうなっていたのだ。
「俺達は家にいたりとかな」
「半日は働いていたりとかな」
「しかも食うものも住む場所も酷いもんだしな」
「死ねっていうのと同じだよ」
産業革命の時代である。そうした様々な問題も浮き彫りになってきていたのだ。だがそれが次第にあらためられてもいっていたのだ。
そして彼等が街に出るとだ。石造りの建物が並ぶ裏通りにおいてだ。子供達が新聞を配って回っていたのである。
「さあ号外号外」
「安いよ」
「買っておくれよ」
「けれどガキはまだ働いてるな」
「新聞売りか。あれは子供じゃないとな」
労働者達はその子供達が新聞を売っているのを見ながら述べた。
「どうしようもないからな」
「だよな。それじゃあここはな」
「買ってやるか?」
「そうするか?」
「ああ、そうするか」
こう話をするのだった。
「小銭もあるしな」
「号外ってのも気になるしな」
「おい、坊主」
そしてだ。彼等はだ。子供達のうちの一人に尋ねたのだ。
「号外って何だ?」
「何があったんだ?」
「ああ、切り裂きジャックが出たんだよ」
その子供はこう彼等に答えた。そのロンドンのスラム街に出て娼婦達を手術用のメスで次々に切り裂いて惨殺したという殺人鬼だ。その正体は今もわかっておらず専門の研究家までいる程だ。
「またね」
「おいおい、ジャックはもう消えただろ」
「一体何時の話だよ」
労働者達はその子供の言葉に肩を竦めさせて返した。
「あいつがまたロンドンに舞い戻ったっていうのか?」
「嘘じゃないのか?それって」
「嘘じゃないさ」
子供はそれは確かに言った。
「けれどね」
「けれど?」
「何かあったのか?」
「このジャックはあのジャックじゃないよ」
要するに別人だというのだ。
「第二の切り裂きジャックさ。出て来たのはベーカー街」
「おいおい、そこかよ」
「そこに出て来たのか」
「殺されたのは若い女性」
そこも違った。ジャックが殺したのは中年の
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