第32話
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があると確信していた。
「それがですね〜、そう良い話しばかりでは無いのですよ」
卓上の地図を指差し、迂回路の場所を皆に教える。
陸遜が指したそこは、道の無い山岳地帯だった。
「険しい山岳地帯で移動幅が狭く、騎馬は二騎以上並んで進めませんので、大軍での突破には向きませんね〜。
そして見通しが悪いです。伏兵や罠の事を考えますと、抜けるのは大分難しいです〜」
実際、私なら大量の伏兵を配置しますね〜と報告を締めくくると、今度は水を打ったような静けさが流れた。
「……」
迂回路の危険性を確認し、口を噤んだ諸侯を。
華琳はつまらない者を見るような目で一瞥した。
彼らの心境は単純でわかり易い。
そもそも連合に参加した彼らの動機は、董卓が相国となる事を良しとしない者、又は勝ち馬に乗りに来ただけだ。
これほどの規模を誇る連合軍、負ける可能性は限りなく低い。
彼らの目標は、『どうやって勝つか』では無く『どう上手に勝ち馬に乗るか』である。
最小限の損害で勝利し自軍の名を、あわよくば手柄をあげて武名を手に入れようという算段。
ノーリスクでハイリターンを望む者達。
そんな彼らが、万が一にでも自軍の全滅や己の命に危険がある迂回路を使おうと思うだろうか。
答えは否、その証拠に誰も口を開かず静観している。迂回路の話しが出たときにはあれほど息巻いていたというのに――
「迂回路を利用する上での危険性はわかった――が、それだけの要所を捨て置くのは惜しいな。
なぁ、各々方?」
「む、無論です」
「じゃあわしの軍で行きますよ」
「いやいやここは私が」
「え、じゃあ俺――」
『どうぞどうぞ』
「!?」
他侯の目の前で臆した態度をするわけにもいかず。ついには漫才と共に押し付け合いを始めだした。
「そのことで、私から提案があります」
「周瑜か、聞こう」
「いかに危険があるとはいえこれほどの要所、当然誰もが攻略したいと考えるでしょう。
そこで――我らが総大将に迂回路の担当を決めていただくのは如何でしょうか?」
「む…我に?」
「おおっ、それは名案!」
「袁紹殿の決定ならわしらに異論はないわい」
「左様、あの方の目に狂いは無い」
「……」
ここぞとばかりに袁紹を捲くし立てる。ご機嫌取りも含まれているが、彼等が期待しているのは袁紹の慧眼である。
用は迂回路攻略の任から外れる大儀明文が欲しいのだ。
(周瑜め、何を企んでいる?)
この流れで断るわけにも行かず、此方を見やりながら得意げに笑みを浮かべている周瑜を尻目に、袁紹はどの軍に迂回路を任せるか思案する。
「……」
ほんの少しの間、目を閉じた袁紹
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