第32話
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…構わぬ」
順当に袁紹が総大将に着任すると誰もが思った中、待ったを掛けるものが一人。
袁紹の言葉を数瞬詰まらせる彼女は、何を隠そう華琳である。
とはいえ、彼女自身袁紹が総大将となることに不満がある訳ではない。ただ、面白くないのだ。
提案を口にしてから自信満々な名族の顔を見て、何故か軍儀前に自陣の天幕内で感じた『何か』を思い出し。反射的に声を上げてしまった。
華琳を見て袁紹は体を僅かに強張らせる。彼女が――あの笑みを浮かべているのだ!
「この席順、皆も理解している通り袁紹殿は連合は平等だと主張しているわよね?」
「うむ、この連合に上下関係は無粋である」
華琳の言葉を聞いた諸侯達も頷く、袁紹の意図を解していなかった一部の者達が合点がいく表情をしていた。
まるで彼らの誤解を解くための言葉に聞こえるが、華琳にその気は無い。
ただこの先の言葉の為、皆に理解させる必要があっただけである。
「その平等を主張した袁紹殿が、自分を総大将にと名乗り上げたのは――ここにいる誰よりも自分が上だと判断したからかしら?」
『!?』
その言葉に諸侯はハッとした表情になる。華琳の指摘通り、平等を訴えたはずの袁紹が、自身を総大将に据えようとするのはどこか矛盾している。
―――とはいえ、彼女の発言は屁理屈に近い。総大将としての器なら華琳も決して見劣りしないが、袁家よりも格下の家柄では角が立つ。袁紹の他に適任者が居ないのだから、たとえ彼が名乗り出なかったとしても、誰かしら袁紹を推薦していただろう。
しかし、いかに屁理屈に近い言葉であっても、矛盾点を突かれたことに変わりは無い。
返答を誤れば、皆の袁紹に対する評価が下がる可能性が高かった。
(華琳め、我に何か恨みでもあるのか?)
平静を保ちながら華琳を睨みつけるが、彼女は微笑んでいた。
袁紹の反応を楽しんでいるのだ。友のドSっぷりに頬を引き攣らせながらも、袁紹は彼女の問いに答える。
「その言にも一理ある、しかし我は思うのだ。たかが『軍儀を取り仕切る者』の人選のために、軍儀を始めるのは時間の無駄だと」
各地の諸侯が連合の下に集ってはいるが、決して一枚岩ではない。
大まかな策、各々の役割は軍儀で決めることになるものの、開戦すれば指揮は各軍に委ねられる。
その中において総大将など飾りに過ぎない。精々やることといえば袁紹の言葉通り、軍議の進行役くらいのものだ。
誰が総大将となっても役割は変わらない。ならば一番角が立たない袁紹がそれをこなし、迅速に軍儀を進める方が有意義である――と、袁紹は口にする。
「……確かに時間の無駄ね。軍議の妨げにななったこと、深くお詫びするわ」
僅かに強張った袁紹
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