第32話
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……大切なお願いがあります!」
「聞こう」
「感謝しましゅ! ……ご存知の通り我が軍は兵力が乏しく、仮に策が成ったとしても、その後の水関へと続けません」
「……」
「そ、そこで! 大陸一と名高い袁紹様の兵を――」
「断る」
「ふぇっ!?」
言葉を最後まで言い切らぬ内に一蹴される。諸葛亮自身、この要請がすんなり通るとは思っていない。
だからこそ説き伏せる為の言葉を幾つも用意し、理論付けで説明しようとしたのに――こうもあっさり断られては何もいえない。
もはや彼女に出来ることは、涙を溜めた瞳で袁紹を見つめるくらいしか――
「む! ま、まて泣くな。これにはちゃんと理由があるのだ!!」
いたいけな少女を泣かせた名族の図回避のため、袁紹は慌てながら言葉を続ける。
「我が兵は各将の下でのみ実力を発揮できる。故に兵だけでは貸せぬのだ」
「!? で、では!」
「うむ、我が軍の将、趙雲とその兵を貸し与えよう」
その言葉に劉備と諸葛亮の二人が歓喜の声を上げ。周りの諸侯達が袁紹の太っ腹ぶりに感心しつつも呆れていた。
これで策が成せると喜ぶ諸葛亮。笑顔に戻った彼女に『あれ』を言うのは心苦しいが――袁紹は心を鬼にする。
「一つ聞いてもらいたい。趙雲を貸すが、其方の指示に従うかどうかは彼女に委ねる」
「!?」
その一言で諸葛亮から再び笑顔が消える。
諸葛亮の企み。それは敵将華雄を討ち劉備軍の名を広めると共に、今ある兵力の被害を最小限に抑えようと言うもの。
華雄を討ち果たした後、激昂した華雄軍と戦いになる可能性が高い。精鋭と名高い彼女の軍と、自分達が率いる義勇軍では分が悪すぎる。多大な被害、あるいは全滅の憂き目にあうだろう。
そこで袁紹軍だ。彼を使い自軍の被害を抑えようとしたが――
――我が兵はお主等の盾では無い
袁紹の言葉にはその意思が強く宿っていた。指揮権は劉備達にあるものの、最終的に従うかどうかの判断は趙雲に委ねられる。
つまり、趙雲とその兵を盾に使えないのだ。
「? どうしたの朱里ちゃん」
「いえ、何でもないです……」
今の劉備に諸葛亮の心情はわからない。彼女は単純に将を貸してくれる袁紹に感謝していた。
このどこか抜けている主の為、自分がしっかりしなくてはならない。
袁紹の怒気に近い気にあてられ、肩の振るえがまだ止まらないが、今は策を練り直さなければ。
諸葛亮は自分に言い聞かせ、親友の鳳統と共に自軍の被害を抑える策を遅くまで語り合った。
そして明朝、水関で待ち構える華雄の前に。孫呉を除く全ての連合軍が布陣した。
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