第32話
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ためくだろう――と、袁紹は予想していたのだが。
「……えいっ!」
「む?!」
なんと白蓮は、大胆にも袁紹の胸に飛び込んできた。
奥手な彼女がこのような行動に出れたのは、袁紹の言葉が関係している。
『華琳だけでは不公平であろう?』それを聞いた白蓮は、華琳も抱擁を受けたものだと考えたのだ。
「何時に無く大胆ではないか! 可愛らしいぞ白蓮」
「あぅ……」
甘い言葉と共に抱き締められる。力が強く息苦しさを感じるが不快感などは一切無く、彼の体温も相まって不思議な心地よさを感じる。
そこにこれまでの疲労が、目蓋を静かに閉じさせようとしたが――
「あ……」
夢の世界に入る前に開放されてしまう。思わず残念そうに声を洩らし、白蓮はさらに顔を紅く染めた。
「すまんな白蓮、これ以上は命に関わるのだ……」
「命って……一体何を――」
冷や汗を出しながら体を離した袁紹に問いかけようとして――止める。
彼の背後からチラリと見える猫耳、そこから何ともいえない気配が漂っていた。
離れるのがもう少し遅かったらどうなっていただろうか、想像すらできない。
「そ、そうだ! 桃香達も連れてきたんだ!」
誤魔化すように話題を変える白蓮。この空気を変える為袁紹もそれに便乗し、天幕の隙間からどこか白い目で見ている劉備達を招き入れた。
「お久しぶりです袁紹さん! 今回は劉備軍として、連合に力を貸すために来ました!!」
「以前は大変お世話になりました。ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」
「お兄ちゃん、ひっさしぶりなのだーッ!」
「うむ、大食い大会以来であるな」
返ってきた言葉に、劉備と関羽の二人は苦笑い。張飛は何故かキョトンとしていた。
「それにしも劉備軍とはな……兵はどうしたのだ。土から生えてきたわけではあるまい?」
「え、えっとそれは……」
「私の領民達だよ。あ、元領民か……」
袁紹の疑問に答えたのは白蓮だ。
「……」
「誓って言うけど桃香達は一切勧誘とかしてないからな? 彼等はただ桃香達を案じて付いてきたんだ。だから――自分を責めるなよ麗覇」
「!?」
白蓮は伊達に私塾で袁紹達と共に居たわけではない。袁紹の考えることなど丸解りだった。
彼は多忙な白蓮の為を思って、精神的な未熟さは兎も角、能力的には有能な劉備達を幽州の地へと送り出した。
結果的に領民を義勇軍として吸収される形になり、それをもたらしたのは自分だと袁紹は考えているのだろう。
「手が足りなくて難儀していたのは事実だし、桃香達が居なかったらあの黄巾の乱で手痛い犠牲を出していた。彼女達を送ってくれた麗覇に感
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