第32話
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「合同軍儀用の天幕がもう完成したか、流石に仕事が早いな」
「あ、おかえりなさいませ麗覇様」
妹の顔を見に行き、ついでに孫呉の者達にも挨拶を終えた袁紹は自陣に戻って来ていた。
陣を離れる前に桂花に要請していた天幕に入り、作業をしている者達に労いの言葉をかける。
「辺りの地形を模した地図、模擬戦駒の準備も整っています」
「うむ、連合が揃い次第始める。頼むぞ桂花」
「はい! お任せ下さい!!」
思わず返事を、それも人目に憚らず喜色を込めてしてしまい。桂花は顔を赤くする。
周りで作業をしている者達はそれを見て微笑む、袁家の日常だ。
一部、殴る壁を探しに天幕を飛び出した者も居るが――見慣れた光景である。
「失礼致します。公孫賛様とその軍が到着致しました」
「来たか! 到着したばかりでは陣を離れられまい。久方ぶりに名族の顔を見せに行くか」
「いえ、それが――」
「麗覇ーーーッ!!」
知らせに来た兵士の声を待たず、駆け足で誰かが向かってくる。
「おぉ白蓮!」
無論その姿には見覚えがあった。私塾来の盟友白蓮だ。
最後に見た記憶よりも背は大きく、色々を含め身体的な成長を遂げている。
(どこぞの娘とは――)
――くしゃり
「華琳様?! 今の文に何か不備が?」
「何も無いわ、看過出来ない何かを感じてつい力が入ったの。気にしないで頂戴」
「は、はぁ……」
その後、終始薄く笑みを浮かべる曹孟徳の姿は、かの陣営でトラウマとなった。
「む! なんだこの悪寒は!?」
「? どうしたんだ?」
「いや……気のせいだ」
身の危機を敏感に察知した袁紹だが、頭を少し傾けながら尋ねてくる盟友の可愛らしさに、ソレを上書きされる。
「ところで白蓮、到着早々に陣を離れても良いのか?」
「うっ……そ、そっちは信頼できる家臣達に任せてあるから」
「ほう、優秀な者を揃えた様だな」
「ま、まぁな!」
袁紹の問いに目を泳がせながら返事をする。袁の軍旗が目に入った途端、我慢できず駆け出してきたなどとは、口が裂けてもいえない。
「フハハ! 何はともあれ良く来た白蓮。我はお前を歓迎する」
「うん、ありがとう! ……それで、その格好には何か意味でもあるのか?」
「歓迎と親愛の抱擁である! 華琳だけでは不公平であろう?」
「なッ!? ほ、ほうよう!?」
華琳のときと同様に腕を広げる袁紹。白蓮に対してはからかい目的だ。
真面目な白蓮は色恋沙汰には疎く、純情な乙女である。
そんな彼女はこの事態に、顔を茹蛸のように赤く染め、慌てふ
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