2部分:第二章
[8]前話 [2]次話
第二章
「それじゃあ」
「実際には吹いてないっていうのかい?」
「そうじゃなかったらいいけれど」
「だから練習してるよ」
うんざりとした口調になっているのが自分でもわかった。
「本当にね」
「じゃあ今は?」
「今はって?」
「今は練習する?できる?」
僕に今問うのはこのことだった。
「今は。できるの」
「今は」
僕は彼女のその顔を見てだ。眉を顰めさせて返した。
「止めておくよ」
「どうしてなの?それは」
「気分じゃないから」
本当にだった。何かやる気がなくなっていた。言われてみれば最近こうしてやる気がなくなってはまたやる、それの繰り返しだった。
「だからね」
「それじゃあ駄目だから」
「駄目って」
「練習しよう」
言う言葉は同じだった。見事なまでに変わらない。
「また」
「だからいいって」
「練習しないと」
僕の目を見てだ。咎めるようにして言ってきた。
「駄目よ。だからね」
「だから今はいいって」
「それでも。本当にできるようになりたいのなら」
「今はいいって言ってるじゃないか」
自分でも言葉が荒くなってきているのがわかった。けれどそれでもだった。その言葉を変えることができなくなってきていた。
心が荒れてだ。僕は遂にこう言った。
「もういい、いいんだよ」
「いいって」
「今日はもうこれで帰るから」
部室に残っているのは僕達二人だけだった。それではだった。
僕達はそのまま部屋を後にした。サックスを置いたまま。深く考えていなかった。今はただ何もかもが嫌になって。そうしただけだった。
部室を出てから下駄箱に向かおうとした。帰るつもりだった。
けれどここでだ。その下駄箱でだ。
彼女が来た。後ろから必死に駆けてきてだった。僕に言ってきた。
「練習しよう」
「まだいうんだ」
「ええ」
咎める顔でだ。僕に言ってきた。
「演奏できるようになりたいのよね」
「うん」
それは本音だった。嘘じゃなかった。
「それはね」
「それじゃあやっぱり」
「練習しかないっていうんだね」
「そう。結局のところはね」
「何でも努力しないとね」
「できないわ」
これもいつも言われることだった。この吹奏楽部ではだ。
その言葉を受けてだった。僕は。
「それじゃあさ」
「どうするの?やっぱり帰るの?」
「いや、気が変わったよ」
こう彼女に返した。
「ここはね」
「ここは?」
「部室に戻るよ」
意を決した顔でだ。僕は答えた。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ