第6章 流されて異界
第134話 弓月桜
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方法など知らないはず。
「一応、信用しとらんようやからもう一度言うけど、今回のアラハバキ召喚の術式は絶対に成功しないぞ」
一瞬毎に濃くなって行く闇を強く感じながら、そう会話を続ける俺。今の状況では情報が圧倒的に不足している。現在の時間から考えると冬至の時間……つまり、召喚の条件が整うまでは未だ時間がある。
それならば、少しでも情報を得る方が上でしょう。
他に仲間がいる可能性もある。別の場所に祭壇が組まれている可能性だってゼロではない。
最悪、この犬神使いが倒される事によって召喚作業が完了するタイプの術式の可能性すら存在しているぐらいですから。
しかし――
「信用はしているよ」
軽く視線を上げて、俺と、俺の右隣に立つ巫女服姿の少女に一瞥をくれる犬神使いの青年。口調も穏やかな物で、これから邪神召喚を行う人間だと思えない程の落ち着きぶり。
更に言うと、俺がさらっと口にしたアラハバキの名前も軽くスルー。肯定する訳でもなければ、否定する訳でもない。
「姉上の話から考えるとふたりばかり人数が少ないみたいだから、そのふたりが黄泉坂の人間と昨夜のあの女を護っているんだろう?」
そっちにも兵を送って居るんだけど、それは無駄になっちまったかな。
何処か、遠く……。おそらく旅館の有る方向を見つめながら、そう問い掛けて来る犬神使い。
但し、直ぐに――
「そっちは召喚が終わってからでも十分かな」
――と続ける。
生け贄として使用する以外の彼女ら……いや、弓月さんの従姉ではない方。ハルヒの方になら、アラハバキ召喚の生け贄として使用する以外にも使い道はある。
そして、この目の前の犬神使いが彼女に固執する理由についても思い当たる物もある。何故なら、コイツ……クトゥルフの魔獣としてのコイツの親はハルヒだから……。
アイツに与えられた属性は神々の母。こう言う、本人同士も良く分からない理由で、ハルヒに固執するヤツが現われたとしても、実は何の不思議もない。
ただ……。
矢張り、犬神は送り込んだのか。そう考えを続ける俺。もっとも、あの程度の犬神が相手なら、俺の飛霊と万結、有希では明らかに過剰な戦力を残して来た可能性もあるか。
ただ、それも程度の問題。もしかすると数万どころか、もう一ケタ上の犬神をヤツが使役出来る可能性もあるので……。
そう考え掛けて、しかし、其処に違和感。
それは、ヤツが犬神を送ったとは表現せずに兵を送ったと表現したトコロ。昨夜は確か犬どもとは表現をしたが、兵とは言っていない。これは、もしかすると弓月さんの親戚が営む旅館に残して来た戦力が過剰戦力だと言い切る事が出来ない可能性も出て来た、と言う事。
確かに、ヤツの言う事をすべて信用する訳には行かな
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