第6章 流されて異界
第134話 弓月桜
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、貴方の思うがまま、自由に生きて下さい。
口調としてはさして強い口調とは思えない口調。但し、彼女の発して居る気配は……おそらく拒絶。
この短い間に、俺は彼女からこれほど強い拒絶を示されるほどの何かを為したのか?
思い当たる理由はひとつしかない。しかし、どう考えても俺には――
「今の貴方では、私はスタートラインにも立てませんから」
少しの笑みを魅せる弓月さん。しかし、その笑みに潜む哀しみ。そして諦観。
今年の二月、出会った当初に有希が発して居た物と同じ気配。俺と同じ年齢の少女が何に絶望すれば、これだけの諦めを身に着けられると言うのか。
それに……。
スタートライン。この言葉の単純な意味を考えるのなら、そのスタートラインに既に立っている人間が居る、と言う事だと思う。
余程、鈍感な人間でない限り、俺と有希、それに万結の間には何らかの繋がりがある事が理解出来るでしょう。もしかすると、ハルヒとの間にも何らかの繋がりを見付け出せるかも知れない。
同じように挙動不審となるさつきとハルヒ。このふたりに対する今までの対応について、矢張り多少の差が有った事は間違い有りませんから。
但し、それならば、何故彼女は、最初、そのスタートラインに立っている、と感じた?
それに、先ほどは聞き流したが、貴方と居る時は何時も頼って仕舞う……と言っていたが、俺は彼女に頼られた事があったか?
そもそも、彼女がハルケギニアに転生して来て、俺に力を貸してくれるのは何故?
偶然の可能性は低い。あのガシャ髑髏との遭遇の際に生命を助けたのは事実だが、それだけでは俺の事を魂に想い出を刻み込むには少し根拠が弱いような気がする。
今までは漠然と、これから先にこの世界で何か事件が起きて、その際に弓月さんの中に、俺に対する強い想いを抱く何かが起きるのだろうと考えていた……のだが。
「もしかして弓月さんも――」
輪廻転生を繰り返す魂同士なら、ふたりは何処かで出会っている可能性はある。そして、今生の俺はその中の幾つかの生命の記憶を蘇らされた人間でもある。
当然、それはかつて俺だった存在が、そうする必要があると判断した結果なのだから、仕方がない事。そもそも、今の生命で前世の経験や記憶がなければ、俺とタバサはあの続いた事件の内のどれかで命を落としていたはずですから。
――二人揃って。
ただ、そうかと言って、今、俺が強制的に思い出さされている記憶がすべてだとは限らない。
もしかすると彼女は……。
少しだけ――三歩分だけ先に進み、其処から上半身だけこちらを振り返った彼女。身に着けた鈴が季節感を無視した哀しい音色を奏でる。
そして、其処から静かに俺を見つめた。
――――
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