第6章 流されて異界
第134話 弓月桜
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を――
深く考えた訳でもない、思わず口にして仕舞ったかのような問い掛けを行って来る弓月さん。
しかし……。
「蓮の花?」
少し眉根を寄せながら、思わず聞き返す俺。まして、それは当然。俺と弓月さんが出会ったのは今年の二月。流石に雪は降っていませんでしたが、桜どころか、桃すら咲いていない季節。
尚、蓮と言うのは夏の花。それに、弓月さんが言うように蓮は明け方頃に咲く花なので、彼女と出会った夜……中学生としては遅い帰宅の時間だとしても、どう考えても蓮の花の咲く朝とは言えない時間帯であった事は間違いない。
もしかするとそれ以後に、直接会話を交わした出会い、と呼べる邂逅があった可能性も……。
そう考えながら、しかし、その可能性が薄い事もまた理解して居る俺。何故ならば、もしそんな事があったとしても、その事に関して事前に有希から何らかの説明があったと思うから。
ハルヒ以外の人間との接触で、忌避しなければならない相手はいない。
それに、七月七日の夜にこの世界を訪れた際にも、異世界同位体の俺と、弓月桜が接触した、……と言う説明を受けていないし、俺の方から彼女に積極的に接触しなければならない理由に思い当たる物はない。
ハルケギニアで大地の精霊王、妖精女王ティターニアと関係がなかった、俺の異世界同位体には。
尚、当然のように、水晶宮の方から渡された資料にも、そのような邂逅があった、などと言う記述はありませんでした。
俺の反応にかなり驚いたような表情を見せる弓月さん。その表情に微かな哀を感じ……。
白い頬が更に白く。むしろ蒼白く、と表現して良いほど色を失い……。
俺の記憶に欠落がある、……と言うのか?
更に深く、更に更に強く思い出そうとする。視線は彼女の顔に固定。その人間が発生させる気。……雰囲気と言う物も、その人物の魂が発生させている可能性も高いので、記憶の中に残っている、弓月桜と似た雰囲気を持つ存在と、蓮の花に共通する記憶がないのかを。
こんな事になるのなら、彼奴を有希に預けるべきではなかった、……と微かな後悔に苛まれながら。
彼女……弓月桜も未だ花開く前の蕾の状態。ただ、有希や万結のような、目の前に居ても、彼女らの実在が疑われるような儚さや、ハルヒの眩しいまでの生命の輝きも持っていない。さつきの凛とした立ち姿も持っていなければ、朝比奈さんのような、彼女に気付かれないようにそっと手を差し伸べて置きたくなるような危なっかしさもない。
何処にでも居るような普通の少女。いや、俺の感知能力に彼女の異能を気付かせる事のなかったその隠蔽能力は卓越した物が有るとは思いますが、それでも何処にでも居るような、少しオドオドとした、気の弱い少女の振りをし
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