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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第134話 弓月桜
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も少し似合わない。
 朝比奈さんは微妙にずれて居るし、ハルヒは俺の前では挙動不審。
 唯一、真面に冗談を言い合えそうなのが朝倉さんだけですから。

 それに、そもそもハルケギニアに居た時に、何故、セーラー服なんだ、と問い掛けた際に彼女の異世界同位体が困ったような顔をして、それは、……と言った後に、視線を背けられた時が、自分自身が本気で、自らの心の奥底にセーラー服に対する何か特別な想いがあるんじゃないかと疑った最初ですし……。

 もっとも、こちらの世界にやって来てからそれが間違いである、と言う事が何となく分かって来たのですが。
 要は、彼女らは自らの事を思い出して欲しかった。そう言う事なのでしょう。
 おそらく彼女らには……最悪でも湖の乙女には俺の記憶がある。多分、妖精女王に関しても、この世界の微かな記憶が残っている可能性があると思う。故に、俺に自分たちの事を思い出して欲しかったから、俺と関わりが深かった時代の衣装で身を包んで居ただけ、の可能性が大なのでしょう。

 ひとつの謎が解け、ひとつの疑惑が払拭された事により、かなり明るい気分で彼女を見つめる俺。
 対して、普段とは違い、確実に俺の事を見つめている事が分かる彼女。

 そう。他人と視線を合わせるのが恥ずかしいのか、それとも別の理由があるからなのかは定かではありませんが、少なくとも西宮に居た時は俺と視線を合わせる事が少なかった彼女が、この高坂の地に入ってからは妙に積極的と成り……。
 何故か俺の瞳を覗き込んで来るようになった。

 その事に気付いたハルヒが妙に突っかかって来るようになり、有希が不機嫌となったのは記憶に新しいトコロ。
 但し、相手の瞳を覗き込むと言う事は、彼女の方も自らの瞳を覗き込まれると言う事。特に俺の場合は……。

 例えばこう言う言葉もあります。目は口ほどに――

「あ、あの、武神さん」

 あまり他人と見つめ合う、と言う行為に慣れていないのか、夜の気配と沈黙。それに、俺の視線に耐えかねたかのような雰囲気で話し掛けて来る弓月さん。彼女としては少し珍しい挙動不審な態度。
 普段の彼女とは違う、しかし、この年頃の少女としては何の違和感も抱かせない……むしろ好意を抱くのに相応しい雰囲気。

 ただ、俺としては別に強い視線を送っていた心算もなかったのですが……。
 矢張り、元々目が悪かった影響から、普段から自然と瞳に力を入れるように見つめる癖があるので、その部分が多少、気の弱い雰囲気のある彼女には問題……威圧感のような物を与えて終ったのかも知れない。

 えっと、とか、あのその、などとあまり考えもなく話し掛けて来た事が丸分かりの言葉をふたつ、みっつと続けた後、

「出会いの日の事を覚えていますか?」

 あの蓮の花の咲く朝の事
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