バルト海編
六話 主人公が基地に着任しました
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1940年4月15日 ロストック近郊の海軍基地
ーーー朝だ。
朝日が昇り、暖かい光が窓から部屋に射し込んでくる。
カモメの鳴き声、汽笛の音、パンが焼けるいい匂い…少女たちは目を覚ます。
「・・・んぁ,あ…朝かな。」 少女は二段ベッドの上で背伸びをする。
彼女, レベッカ・マース軍曹はハシゴをおりると、下の段の同僚を起こす。
「起きてよマックス、太陽が昇ってるよ。」
「 …ん……レーベ、Guten Morgen(おはよう)……今、何時なの?」マクシミリアーネ・シュルツ軍曹が目を覚ます。
「7時、朝食の時間だね。」
彼女たちはカールスラント海軍の海戦ウィッチである。
・ ・ ・ ・ ・
二人は着替えて食堂へ向かう。
「おはよう。」
二人に挨拶をしたのはヴェロニカ・ズボナレワ軍曹で、オラーシャ海軍所属の海戦ウィッチだ。
彼女とその姉妹は1939年末に志願したが、ネウロイに蹂躙されつつあったオラーシャには既に 海戦ウィッチを訓練する場所,教官,機材,時間…何もかも無かった。そのため、彼女たちはカールスラントにやって来て訓練を受けているのだ。
「Guten Morgen.今日も朝からジョギングしてきたの?」
「Да(ダー).… 私は,姉妹の中でただ一人固有魔法がないから…こうやって少しでも追いつかないと。」
「…私たちも自主訓練したほうがいいかしら。」
「うん 、でもやり方は今日から来る教官に聞いたほうがいいんじゃないかな。」
「…教官?」ヴェロニカが訊ねる。
「何でも、スオムスやペテルブルクの戦いで活躍したブリタニアのエースらしいわ。」
「Хорошо(ハラショー)」
ブリタニア海軍に技術指導員を求めたのは、カールスラント海軍もノウハウが不足しているからだ。
海戦用ユニットは世に出て数年しか経っていないため 当初はどこの国でもそうだったのだが、この国で未だに不足しているのはワケがあった。そもそもカールスラント軍上層部は陸空戦力の充実を優先していたうえに 海軍ではZ計画(艦隊拡張計画)を進めていたので海戦ウィッチ隊を設立する予算などなく、研究も暫くの間は細々としか行えなかったのだ。こんな状況では技術が蓄積できるはずがない。
1939年になってようやく本格的な運用研究と国産機の開発が始まったが…時すでに遅し…1939年 9月1日 ネウロイの侵攻が始まった。ネウロイがバルト海へと迫ると、海軍は慌てながらもなんとかウィッチを集めたが、第一陣は人手と技量の不足により死傷率が非常に高かった。
第二陣では同じ失敗を繰り返さないために、わざわざ外国から教官を呼んだのである。
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