第172話 襄陽城攻め5
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策は正宗を探るような視線を向けた。
「余は孫文台が失態をした場合に備え兵を準備したが、孫文台の救援に兵を動かす気はなかった」
正宗は振り返り孫策を見た。孫策は正宗を睨むが平静を装い視線を落とす。その様子を正宗は黙って見ていた。孫策はここで正宗に怒りをぶつけるのは流石に筋違いと自覚したのだろう。
「余は孫文台が出陣した後で夜襲の話を聞かされた」
正宗は淡々と孫策に言った。彼の声は感情が感じられなかった。孫策は正宗の怒りを感じたのか沈黙し疲れた表情を浮かべた。
「孫文台は一軍の将として自らの意思で兵を動かした。その結果がどんなのものであろうと受け入れるのが将というものであろう。だが余は孫文台を救うために兵を動かした」
孫策は正宗の話を聞き何も言えずに沈黙した。
「母の勝手で車騎将軍に迷惑をかけたことお詫びいたします」
孫策は居心地の悪い空気の中で頭を下げ正宗に再び謝罪した。だが、地面を向く彼女の表情は「何で私が」と気落ちしていた。
「余が兵を動かしたのは甘興覇が私に使者を寄越してきたからだ。城内に深入りした孫文台が危険な状態にあり、援軍を差し向けて欲しいとな」
孫策は以外な人物の名を聞き驚いていた。
「思春が」
孫策は独り言を口にした。彼女は合点がいったようだった。正宗が事前に孫堅を陥れるように計画しない限り、彼が孫堅の危機を察知して動けるはずがない。孫堅とともに同行していた甘寧であれば、それを知り行動を取ることも可能だった。孫堅が夜襲に失敗した時に備え、正宗は兵を編成している最中であったからこそ東門に兵を差し向けることも迅速にできたのだろう。
「勝手に行動した者が死ぬのは自業自得だが、それに付き合い死ぬ者達はたまったものではない。救えるのに見捨てたとあっては寝覚めが悪い。だから私は兵を動かした」
正宗は何かを思い出したかの眉間に皺を寄せた。甘寧から孫堅の夜襲を知らされた時のことを思い出したのだろう。孫策は正宗が孫堅の暴走に苛立っていると感じたのか気まずい様子だった。
「このような幸運がそうそうあると思わぬことだな。私は救えぬ時は迷わず切り捨てる」
正宗は冷酷な目で孫策を見た。
「母、孫堅に伝えておきます」
孫策は唾を飲み正宗に拱手した。正宗の様子から次に独断専行を行えば命が危ういと感じたのかもしれない。
「明日は総攻めとなる。孫伯符、お前は如何する? 孫文台はあの状態では参加は無理だろう。しかし、孫家も活躍の場が欲しいであろう」
正宗の言葉は孫策に総攻めに参加しろと暗に言っているように聞こえた。短い間に連戦をすることに嫌気を感じているのか乗り気でない表情だった。
「参加させていただきます」
孫策はしばし考えた
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