暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第172話 襄陽城攻め5
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を本当に愛していた証拠だ。そして、私がお前を家臣にしたいと思ったのもお前の心根を理解したからだ」
「どうして私が真っ直ぐだと分かるのでしょうか? 私は復讐のために父を殺しました」
「その通りだ。だがお前と剣を交えたから分かるのだ。剣とは不思議な物だ。心醜き者の剣の太刀筋にそれが現れる。強かろうと弱かろうとな。お前の剣は真っ直ぐだった。だから私はお前を家臣にしようと思った」

 蔡平は正宗の言葉に何も答えず顔を伏せていた。

「人は生まれを選ぶことはできん。だが、生きる道は自分で選ぶことができる。お前に言ったはずだ。私の家臣として乱れた世を正すために力を貸して欲しいと」
「私の力が清河王のお役に立つのでしょうか? 私は剣の腕も未熟、文字も満足に読めません」
「ならば学べばよい。私の元で学べ。蔡平、(ぎょく)は磨かねばただの石にしか見えん。(ぎょく)は磨いて初めて美しく輝くのだ。お前も同じだ。今は未熟でもいずれ(ぎょく)の輝きを放つ官吏となり、私に役に立てるようになる」

 正宗は片膝を着き、蔡平の手を取り語りかけた。

「私は清河王の御恩に報いるものが何もございません」
「お前が私に恩を感じるなら、身につけた力で他の者を助けてやるのだ。それが私への恩を返すことになろう」
「清河王、改めて申し上げます。私を清河王にお仕えさせてください」

 蔡平は嗚咽しながら正宗に仕官を願いでた。その言葉を聞いた正宗は深く頷いた。

「蔡平、よくぞ決心した。これからよろしく頼むぞ。私の真名は正宗。私の真名をお前に預ける。お前の真名を教えてくれるか?」

 正宗は蔡平に言った。

「私には真名はございません」

 蔡平は小さな声で正宗に答えた。

「そうか。ならば私がお前に真名を付けてやろう」

 正宗は腕組みをし考えると口を開いた。蔡平は正宗の姿を見ていた。

「私の真名の一字を取り『宗寿(そうじゅ)』と名乗るがいい」

 正宗は篝火で灯りの当たる地面に「宗寿」と指で書いた。その様子を蔡平は黙って興味深そうに見つめていた。

「そうじゅ? 『宗寿』で『そうじゅ』と呼ぶのですね? ありがとうございます」

 地面に書かれた真名に見続ける蔡平は涙を浮かべていた。彼女は目を拭うと、顔を見上げ嬉しそうに正宗に礼を述べた。

「当面は満郎中令の元で励め。冀州に帰還したら学校に通って貰うぞ」
「学校でございますか?」
「そうだ。お前にとって学ぶことが多くあるはずだ。明日は襄陽城の総攻めを行う。朝が明けるまでまだ時間はある。よく寝ておけ」
「畏まりました」

 正宗は蔡平の左肩に手をかけると立ち上がり、蔡平を残し天幕に戻って行った。
 蔡平が立ち去る正宗に頭を下げ去ると一人の人影がゆっくりと現れた。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ