第二百四十話 果心居士その六
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「だからですか」
「ここは」
「旗を作れ」
信長が言ったことはこれだった。
「旗をすぐに作るのじゃ」
「その呪文を書いた旗を」
「すぐに作りますか」
「急げ、それも出来る限り多くじゃ」
そうせよというのだ。
「そして軍勢に回るのじゃ」
「成程、そうしますと」
信行も信長のその話を聞いて言った。
「全軍にその呪文が行き渡り」
「魔界衆の妖術を破れるな」
「左様ですな」
「旗はただ家紋等を示すだけではない」
「魔を打ち破ることにも使える」
「だからじゃ」
「ここは旗をすぐに作り」
「全軍に行き渡らせよ」
こう言うのだった。
「それぞれの軍勢の旗にそのまま呪文を書け」
「すぐにですか」
「無地の旗に呪文を書くのじゃ」
信長は信行にも言った。
「ではな」
「畏まりました、では」
平手が応えた、こうしてだった。信長は呪文を旗に書いて全軍に行き渡らせることにした。そのやり取りを見てだった。
果心居士は唸ってだ、こう言った。
「成程、旗に書けば」
「そうじゃな」
「武具に書いても一人ずつにしか効果はありませぬが」
「旗ならばじゃな」
「はい、全軍にです」
「力が及ぶな」
「少なくとも旗の周り、およそ一町位は」
旗を中心としてそれ位の距離はというのだ。
「呪文を破ることが出来ます」
「それでじゃ、l呪文を書いた旗を幾つも立ててな」
「防ぎますな」
「そうする、これでよいな」
「はい」
果心居士は信長に確かな声で答えた。
「そこまではそれがしも考えませんでした」
「そうだったか」
「はい、では」
「うむ、早速旗を作るぞ」
「お任せします、ではそれがしは」
「待て、折角魔界衆の妖術を破る方法を教えてくれたのじゃ」
果心居士が去ろうとしたのを見てだ、信長は彼を呼び止めた。
「褒美をやろう」
「いや、それは」
「よいのか」
「それがしそうしたものには興味がありませぬ」
「俗世のことにはか」
「はい、ですから」
褒美はというのだ。
「遠慮させてもらいます」
「そうなのか、ではな」
信長は果心居士のその言葉から彼の気持ちを理解してだった、彼のそれを汲み取ってそのうえで述べた。
「礼を言わせてもらう」
「さすれば」
「ではわしはこれより魔界衆の者達と戦いな」
「そして、ですな」
「あの者達を倒してじゃ」
そのうえで、というのだ。
「天下に泰平をもたらすぞ」
「その様にされて下さい」
「それを見てくれると有り難い」
是非にと言うのだった。
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