3部分:第三章
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「御前以上って」
「いや、あのボールは確かに凄い」
しかしそれは謙遜ではなかった。彼は今の自分の三振でそれを確信していたのだ。
「打てないな、まず」
「それはな」
「確かにな。とんでもないボールだ」
ナイン達もそれは認める。強力打線で知られる彼等に対して三振の山を築いているのだからこれは頷くしかなかった。
「今のところは無理だ。けれどな」
「けれどな?」
「俺は絶対に勝つ」
今それをナイン達に告げる。
「何があっても最後に投げ勝つのは俺だ」
「自信があるんだな」
「自信があるからエースだ」
強い言葉であった。ピッチャーはそれだけの気の強さがなければとてもやってはいけない。ピッチャーとはそれだけのものが必要なポジションなのだ。
「だからだ。勝つまで投げてやる」
「頼むぜ」
「じゃあ俺達はその間に」
今もマウンドで力投する光正を見て彼等は言う。
「あのピッチャー攻略してやるからな」
「それか俺が打つ」
村山もまた強い目で光正を見据えた。そうして言うのだ。
「どちらかだ。とにかく勝つぞ」
「ああ、わかった」
「絶対にな」
両軍の戦いは続く。光正も村山も投げ続け延長十八回が終わった。その日は結局両軍勝負がつかず明日に持ち越しとなったのであった。
「凄いな」
「二人共二試合分投げたで」
甲子園の観客達も二人の力投に唸るしかなかった。甲子園という球場は実に不思議な場所で時としてこうした奇跡的な名勝負が行われる。観客達は今まさにその奇跡を見たのである。
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