巻ノ二十七 美味な蒲萄その十一
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「兵を率いる戦は、です」
「賊の頭をしていたことがあるにしましても」
「我等の戦は一人でします」
「戦の場においても」
「そうじゃな。御主達は兵を率いる者達ではない」
それこそ十人共というのだ、昌幸は初対面であるが彼等がどういった者達は見抜いていてそのうえで言うのだ。
「一人で戦う者達じゃ」
「だからですか」
「それがしに禄は多くはいらぬ」
「そうも仰るのですか」
「禄が多いと従者を持ってじゃ」
そして、というのだ。
「その者達を率いて戦うことになるが」
「どうもそうした戦は」
「我等には向きませぬ」
「一人で術を以て戦うのならともかく」
「そうした戦は」
「御主達は率いられてそれぞれの武で戦う者達じゃ」
それが彼等だというのだ。
「だからな」
「石高はそれ位で」
「後は殿が、ですか」
「兵を率いて戦われる」
「そうあるべきなのですな」
「こ奴は剣や槍も出来るが」
昌幸は今度は幸村を見つつ話した。
「七兵法書等様々な書を叩き込んだ、元々兵を率いる才もある」
「だからですか」
「殿が兵を、我等を率いられ」
「我等はその殿の下戦う」
「そうあるべきなのですな」
「禄が多いとそうはいかぬ」
とてもとも言う昌幸だった。
「だからじゃ」
「そうですか」
「だから我等は二十石ですか」
「それだけでの石高で」
「後は殿が、ですな」
「ご自身の兵を率いて戦われるのですな」
「そうあるべきじゃ、そうせよ」
昌幸はあらためて主従に告げた。
「これからはな」
「わかりました」
幸村は父のその言葉に頷いて答えた。
「父上がそう仰るのなら」
「うむ、その様にな」
「この者達にはそれぞれ二十石与えます」
「そのうえで家臣とするな」
「そうします、住む場所は拙者の屋敷です」
そこにというのだ。
「寝食を共にします」
「ははは、旅で早速強い絆を作ったな」
「はい」
幸村は父に確かな声で答えた。
「常に共にいましたので」
「義兄弟でもあってな」
「ですから」
「共に屋敷で暮らすか」
「そうします」
「そういえば御主はまだ女房がおらず従者も少ない」
このこともだ、昌幸は言った。
「丁度よい、その者達は御主にとって従者ともなる」
「さすれば」
「共に住むがよい」
昌幸はこのことも認めた。
「これからはな」
「さすれば」
「この者達十人を真田家の家臣とする」
即ち幸村の家臣に認めるというのだ。
「以後当家の為に励むのじゃ」
「畏まりました」
十人は幸村の後ろで昌幸に応えた、こうして彼等は正式に真田家の家臣となった。以後は政の話が行われてだった。
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