巻ノ二十七 美味な蒲萄その九
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「十万の兵でも陥ちぬ」
「十万の兵でも」
「では例え天下人が大軍で攻めてきてもですか」
「簡単にはですな」
「陥ちませぬな」
「城の中には井戸も多くあり常に兵糧や武器を多く置いておる」
そうしたものもだ、置いているというのだ。
「結構な数の軍勢が長きにわたって籠城出来る」
「そうなのですな」
「この城は陥ちない」
「そうした城ですな」
「まさにこの城は」
「そうじゃ、この城は陥ちぬ」
また言うのだった。
「容易にはな」
「そしてこの城にですな」
「大殿と若殿がおられますな」
「殿のお父上と兄上が」
「そうなのですな」
「そうじゃ、では参るぞ」
その昌幸と信之のところにというのだ。
「お二人のところにな」
「では」
こう話してだ、そしてだった。
一行は昌幸と信之のところに案内された、そのうえで。
幸村は主の座にいる昌幸とそのすぐ左手に控える信之に十人を紹介した。真田家の主な家臣達も揃っている。
十人はここでだ、それぞれ名乗った。
「海野六郎です」
「穴山小助です」
「筧十蔵です」
「根津甚八です」
「望月六郎です」
「三好清海入道です」
「三好伊佐入道です」
「霧隠才蔵です」
「由利鎌之助です」
「猿飛佐助です」
十人は皆己の言葉で名乗った、そしてだった。
幸村がだ、己の前にいる昌幸に話した。
「この十人がです」
「御主が旅で会って家臣とした者達じゃな」
「はい」
その通りだというのだ。
「拙者の家臣、そして義兄弟達です」
「義兄弟の契も結んだか」
「生きるも死ぬも同じと誓い合いました」
「会ってすぐにか」
「この者達が十人になった時にです」
即ち猿飛と会って家臣にした時にというのだ。
「義兄弟の契を結びました」
「主従になると共にか」
「供に家を守ろうと」
「そうか、どの者達もな」
昌幸はあらためて十人を見てだ、幸村に話した。
「いい目をしておるな」
「では」
「ただ強い者達だけではないな」
十人共、というのだ。
「心も備えておるな」
「はい、一途な者達です」
「その者達が十人おりか」
「拙者の家臣として真田家に仕えるとのことです」
「してじゃ」
昌幸は幸村にあらためて言った。
「この者達を召し抱えるにしてもな」
「それでもですな」
「この者達をどれだけの禄で召し抱える」
昌幸はこのこともだ、幸村に問うた。
「一体」
「はい、それがしの禄の中からです」
「二千石の中からか」
家からそれだけだ、幸村は貰っているのだ。流石に家の次男だけあって貰っている石高は高いものがある。
「どれだけだす」
「それぞれ百石出します」
「御主の石高の半分か」
「左様です」
「何と、百石とは」
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