巻ノ二十七 美味な蒲萄その八
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「それも顔のことを」
「その顔では当然じゃ」
「全くじゃ」
他の者達は笑って霧隠に言う。
「その顔ならばな」
「誰でも見るわ」
「まあそのことは踏まえてな」
「上田でもやっていくのじゃな」
こう彼に言うのだった、そうした話もしてだった。
一行は上田城の門に来た、するとだった。
門番の足軽達がだ、幸村に言って来た。
「これは若殿」
「よくぞ戻られました」
「お元気そうで何よりです」
「そして後ろの方々は」
「うむ、拙者の家臣達じゃ」
幸村は微笑みだ、十人を足軽達に紹介した。
「旅の中で知り合ったな」
「ですか、この旅でお会いした」
「そうした方々ですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「今では拙者の義兄弟でもある」
「何と、どの方もですか」
「若殿の義兄弟」
「そこまでの方ですか」
「これから宜しく頼む」
幸村は足軽達にも言った。
「共に当家に仕える者達じゃからな」
「はい、わかりました」
足軽達は幸村の言葉に笑顔で応えた、そしてだった。
門が開けられてだった、足軽の一人が主従を城の中に入れて案内をした。十人はその城の中に入る進むうちに。
考える顔になってだ、こうそれぞれ言った。
「ううむ、この城は」
「かなりな」
「決して大きくはないが」
「櫓も物置も多い」
「造りは複雑で」
「非常に守りやすく」
「かつ攻めにくいな」
城の中に入ってもわかることだった、むしろ城の中に入って見回すとそれが余計にわかるのだった。
「まさに妙なる城」
「ここまで攻めにくい城もなかろう」
「城壁も石垣も高い」
「しかも堀も深い」
「険しいことこの上ない」
「妖術で造ったかの様すな城じゃな」
「元からここにあったがな」
幸村が唸る一同に話す、彼等の前を進みながら。
「父上があらためてな」
「この様にですか」
「堅固な城にされたのですか」
「決して大きくはありませんが」
「複雑な中で守りやすい」
「敵を決して寄せ付けぬ」
「そうした城にされたのですな」
家臣達も言う。
「大殿は智将と名高い方ですが」
「そのお智恵がですな」
「この城に全て注がれた」
「そうなのですな」
「そうじゃ、決して陥ちぬ城はないが」
ここでもだ、幸村はこう言うのだった。例えどうした城であっても決して陥ちない城というのは有り得ないというのだ。
しかしだ、それでもというのだ。
「この城はそうおいそれとは陥ちぬ」
「難攻不落という訳ですな」
「つまりは」
「そうじゃ、この城はまさに難攻不落じゃ」
まさにというのだ。
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