巻ノ二十七 美味な蒲萄その七
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「この地も民達もな」
「昔から共にいて」
「何よりもの宝」
「そうお考えだからですか」
「何があろうとも守る」
「殿はそうお考えですか」
「左様、恭しくされるのは好かぬが」
それでもというのだ。
「拙者はそうする」
「そうですか、では」
「その為にもですな」
「我等も殿と共にですな」
「ここで戦う」
「その為の我等ということですな」
皆幸村の後ろで微笑んで言う、民達はその彼等を見て口々に言った。
「また随分変わった者達じゃな」
「身なりも顔もな」
「えらく顔のいい方もいるが」
「何かどの方もな」
「変わった方々じゃ」
「あれは傾奇者か?」
「ははは、傾奇者か」
猿飛は彼等の言葉を聞いて笑って言った。
「そういう風に見えるか」
「あのでかい坊さんの顔は面白いな」
「うむ、騙し絵みたいじゃ」
「何処から見ても面白く見える」
「変な顔じゃ」
「そうか、ではよく見るのじゃ」
清海は自分のことを言う民達に彼もまた笑って返した。
「そして笑うのじゃ」
「隣の坊さんは真面目そうじゃな」
「お若いが徳がありそうじゃな」
「学もおありじゃな」
「そう言われると恥ずかしいですね」
伊佐は実際に気恥かしそうにだ、雲水で顔を隠した。
「私は徳なぞありませぬ」
「まあそう言うな」
根津がその伊佐に言う。
「珍しいものを見てそう言っておるだけじゃ」
「あの方は忍か」
「背中に大きな布を羽織っておられるが」
「あれで空を飛ぶのか?」
「そしてあの鉄砲を空から撃たれるか」
「おお、それは面白いな」
穴山は民達が自分を見て言う言葉にふと思って言った。
「このマントで飛んで空から鉄砲を撃てば凄いな」
「そんなこと出来るか」
流石にとだ、望月が彼に言った。
「人は鳥とは違うぞ」
「そうじゃな、それはな」
風の術を使う由利もこう言う。
「出来ぬぞ、むささびの術か凧に乗ることは出来ても」
「まあそのことはおいおい考えるとしてな」
筧は穴山の言葉を否定せずにこう述べた。
「我等について言うことは聞くべきものもあるであろうな」
「あの方はまた顔がよいな」
「あそこまでお顔のよい方ははじめて見るぞ」
「うむ、実にな」
「整ったお顔立ちじゃな」
霧隠についてもだ、民達は言った。
「いや、何をされておる方か」
「あれ程の美男ははじめて見たぞ」
「春日源助様も見事なお顔だったというが」
「あの方もな」
「相当じゃな」
「わしのことも言うか」
霧隠は表情を消して述べた。
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