番外『交わる世界』
交節・『戦慄』なる者と吹きすさぶ【禍風】
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
も半身になりながら大袈裟にかわされる。
……その行動の意図にフォラスが気が付いたのは、【雪丸】の柄を“掴む”と同時に詰め寄って来てからだった。
「ヒヒヒハハ……!」
今の今まで自分の相棒足る【雪丸】を掴ませるなど、当然経験した事がないフォラスの動きが一瞬間だけ鈍った。
生まれた間隙を逃さず、突き坐された槍の穂先は―――間一髪、反応したフォラスの首振りで頬を掠めていく。
「ぅくっ!?」
が、膝蹴りが命中してしまい「く」の字に曲げさせられた。
「まだまだっ……!」
字面だけなら苦悶だが……しかし顔に浮かぶは笑み。
未だかつてない敵との戦いを、フォラスは心の底から楽しんでいた。
この人ともう少し、ヒリヒリとする戦いを演じてみたい。
『後もう少し……もう少しでいい、この戦いを長引かせてみたい』
フォラスの頭の中にそんな言葉が浮かび、間髪いれずにバックダッシュ。
(間に合わせるっ!)
最早グザの追跡には目もくれず、メニューを開いて《クイックチェッジ》をクリック。
両手に現れるは白き薙刀ではなく、【エスペーラス】【マレスペーロ】と呼ばれる片手直剣。
彼のもう一つの主軸スキルたる……《双剣》スキル、始動の時だ。
「あはっ」
より一層楽しげに笑い、フォラスは思った以上に未だ遠くから走り寄るグザに、今度は自分から突っ込んでいく。
突進と共に威力を増した量の剣が、橙色の十字を描き迫まらせる―――――
「ヒヒヒ、まだ甘いわな」
―――筈だったのだ。
何が起きたのだろうか……グザの声が聞こえた直後、フォラスの視界は引っ繰り返り、ディエル終了のアラームが鳴り響いていた。
数瞬遅れて逆さまになっていた己の視界が、背中への衝撃と共に上空へ向けての視点へと変わる。
盛り上がる筈だったデュエルは、唐突に終わりを告げたのだった。
・
・
・
・
・
(負けた……負けたなぁ……)
自分が負けたと頭では分かっていても、未だ着いて行けない部分があるのか、フォラスは終了後数分もの間、寝転がって天を覆う雨雲すら隠すキノコや葉っぱを見ている。
敗北が分かってから次に思いだしたのは、グザが一回もソードスキルを使っていないと言う事だ。
フォラスとて2回しか使っていないが、それは彼のプレイヤースキルに圧倒されていたから。
オマケにグザは手を抜いていた訳では有るまいが、完全に本気だったとも言いきれず、フォラスとしてはもう少し手を引きだしておきたいとの、未練も抱いている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ