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大刃少女と禍風の槍
番外『交わる世界』
交節・『戦慄』なる者と吹きすさぶ【禍風】
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も半身になりながら大袈裟にかわされる。

 ……その行動の意図にフォラスが気が付いたのは、【雪丸】の柄を“掴む”と同時に詰め寄って来てからだった。


「ヒヒヒハハ……!」


 今の今まで自分の相棒足る【雪丸】を掴ませるなど、当然経験した事がないフォラスの動きが一瞬間だけ鈍った。
 生まれた間隙を逃さず、突き坐された槍の穂先は―――間一髪、反応したフォラスの首振りで頬を掠めていく。


「ぅくっ!?」


 が、膝蹴りが命中してしまい「く」の字に曲げさせられた。


「まだまだっ……!」


 字面だけなら苦悶だが……しかし顔に浮かぶは笑み。
 未だかつてない敵との戦いを、フォラスは心の底から楽しんでいた。

 この人ともう少し、ヒリヒリとする戦いを演じてみたい。

 『後もう少し……もう少しでいい、この戦いを長引かせてみたい』

 フォラスの頭の中にそんな言葉が浮かび、間髪いれずにバックダッシュ。


(間に合わせるっ!)


 最早グザの追跡には目もくれず、メニューを開いて《クイックチェッジ》をクリック。
 両手に現れるは白き薙刀ではなく、【エスペーラス】【マレスペーロ】と呼ばれる片手直剣。


 彼のもう一つの主軸スキルたる……《双剣》スキル、始動の時だ。


「あはっ」


 より一層楽しげに笑い、フォラスは思った以上に未だ遠くから走り寄るグザに、今度は自分から突っ込んでいく。

 突進と共に威力を増した量の剣が、橙色の十字を描き迫まらせる―――――






「ヒヒヒ、まだ甘いわな」


 ―――筈だったのだ。


 何が起きたのだろうか……グザの声が聞こえた直後、フォラスの視界は引っ繰り返り、ディエル終了のアラームが鳴り響いていた。

 数瞬遅れて逆さまに(・・・・・)なっていた己の視界が、背中への衝撃と共に上空へ向けての視点へと変わる。



 盛り上がる筈だったデュエルは、唐突に終わりを告げたのだった。














(負けた……負けたなぁ……)


 自分が負けたと頭では分かっていても、未だ着いて行けない部分があるのか、フォラスは終了後数分もの間、寝転がって天を覆う雨雲すら隠すキノコや葉っぱを見ている。


 敗北が分かってから次に思いだしたのは、グザが一回もソードスキルを使っていないと言う事だ。
 フォラスとて2回しか使っていないが、それは彼のプレイヤースキルに圧倒されていたから。

 オマケにグザは手を抜いていた訳では有るまいが、完全に本気だったとも言いきれず、フォラスとしてはもう少し手を引きだしておきたいとの、未練も抱いている。

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