番外『交わる世界』
交節・『戦慄』なる者と吹きすさぶ【禍風】
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……彼なりの構えなのか、次第にフォラスの身体がユラリ、ユラリと揺さぶられ始めた。
これからの行動に支障をきたさぬ為のルーティーンか、それとも本当に彼なりの構えなのか。
一方のグザは片手に槍をぶら下げたまま、以前として薄笑いを止めようとはしない。
まだ構えている分、フォラスの方がずっとマシだといえた。
時間は当然止まらない。
あと7秒、6秒、5秒、4……3……と終わりに近づき、DUEL! と大きく文字が瞬いた。
刹那…………フォラスの姿が掻き消えた。
「!」
視界から完璧に消えた彼を、もしこの場に何人もプレイヤーが居たとして、果たして目で追えたと言えるものは何人いるのか。
その驚異的なスピードに、グザの顔に初めて笑み以外の感情が―――驚愕の感情が浮かんだ。
「うぉわあっ!?」
―――――しかし謎の[乾いた音]と同時に驚愕の“声”をあげたのは、何時の間にかグザの右隣に陣取っていたフォラスの方だった。
見るとグザは正面を見据えているのに、右足での横蹴りをフォラスの薙刀目掛け、繰り出している。
オマケに打ち払うのみで満足せず、距離こそあれどフォラスの顔面に突き付けられており―――何時でも脚裏で打ち据えられる態勢だ。
慌てて大きく距離を取るフォラス。
……が、されどグザは追随もせず、肩に槍を担いで彼を見やるのみ。
「いや、驚いた驚いた。中々のスピードやね」
言いながら字面とは正反対の、軽薄そうな笑顔を浮かべるグザ。
そんな気の軽げなあんちゃん風情はそのままに、決して『鋭い威圧感』を霧散させようとはしない彼へ、フォラスも冷や汗を流しながら目線だけは逸らさない。
「驚いたのはこっちの方だよ……まさかこうも簡単に『心渡り』が破られるなんて、さ」
「あぁ、名前があったんかい」
『心渡り』
―――簡単に言うならば、マジシャンが行う『右手や口振りで大仰に動作し、左手のタネから意識を外して隠す』トリックと基礎の原理自体は同じ。
それに加え外的要因、リズムの急激な変化、本人の俊敏値、【隠蔽】スキルを駆使して相手の意識の外から攻撃を仕掛ける、いわばフォラスの十八番とも言える絡め手なのだ。
そしてこれを見破った者こそいるものの、完璧に対処してきたプレイヤーは数えるほども居ない。
……にも拘らず、目の前のグザは“初見”で見破って来たのだ。
(オマケに下手すれば、今ので勝負が決まってたしね……おっそろしいな、この人)
も一つ冷や汗を流すフォラスに、グザは余裕なのか追撃の構えを毛ほども見せない。
それどころかニヤリと笑い、人差し指をクイクイ曲げて
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