番外『交わる世界』
交節・『戦慄』なる者と吹きすさぶ【禍風】
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―――何と、勝負にすらならなかったという。
誤解を恐れずに言うなら、幹部プレイヤーは弱くもなく寧ろ強者に部類し、未知数な部分もある為に油断をしていた訳でもない。
ただ圧倒的に“彼”が強く、恐ろしく速く、格が上だっただけなのだ。
その後、“彼”は『自分に納得がいかないなら、何時でも勝負を挑みに来て良い』……そう言い残して、この週間降雨量がどれだけか図るのも億劫そうな、常時雨降りエリアを名指しした。
そして、その物好きな挑戦に臨む者こそが、今此処にいる“彼女”らしかった。
「何処まで強いんだろう……ちょっと楽しみになって来たかな」
ブルリ、興奮と気温の両方から背筋を震わせて、少女は指定された場所を目指しひた歩く。
と、一瞬だけ“彼女”は後ろを向き……不思議そうに小首を傾げながら、再び前に戻した。
「それにしても、アマリは何で来なかったんだろ? 別行動中では有るけどさ」
友達らしき『アマリ』と言うらしき人物の名を口にし、歩く速度は緩めぬままに、心底不思議そうな声色で紡ぐ。
どうもそのプレイヤーもこう言った荒事や謎事に興味を示す質らしいので、よく知っているであろう間柄とくれば尚更に不可思議に思うのだろう。
振り払えぬ違和感を脳裏に留めたまま、振り続く小雨の中を行く事更に数分……。
「あ。あった」
巨大なキノコや特徴的な形の葉っぱに囲まれ、そこら一帯だけ濡れていない広いスペースが現れた。
此処はゲームで言う安全地帯であり、モンスターも出現しないので休憩にはもってこい。
……なのだが湿度が高い事に変わりはなく、地面にコレでもかと生える雑草に苔むした切株、食べても良いのか分からないキノコに時折通り過ぎる虫と、外観が良いとは言えないのもまた事実なのだ。
と―――件のプレイヤーらしきものが切株に腰かけており、“少女”から見て背を向ける体勢で何やら青い“何か”を漂わせている。
兎も角、お目当てのプレイヤーに出会えたのだからと、“彼女”は嬉々として歩みを進め、男性プレイヤーまで大きく近付く。
「えっ……?」
そして―――絶句し、固まった。
それはプレイヤーに似たキノコだったとか、イベントモンスターであっただとか、そういったオチから来るモノではなく……彼の格好にあった。
(は、半裸……? それに、全身刺青……?)
男性の装備はある意味で奇抜であり、まず下はズボンをはいてグリーブまで付けているのに対し、上半身は細い布を右肩から斜めに掛けただけの『半裸』。
黒人並な肌でも目立つぐらい、体中に刺青が彫られていて、差し詰め見た瞬間の第一印象は『刺青半裸などこぞの部族』がピッタリな容姿
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