アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 02
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べく甘い空気を出さないよう、サチ姉は笑って、それからアスナさんを正面から見据える。
咎める色でも、責める色でも、まして嫉妬の色でもない、ただただ申し訳なさそうな色が揺らぐ瞳をアスナさんに向け、すぐに俯いた。
「あー、サチ姉。 みんなが待ってるんじゃないのかな?」
「え? あ、うん、そうだね。 じゃあ、もういくね……」
「うん。 また近いうちに遊びにいくから」
「待ってる。 じゃあ、キリト」
「ふぉあ?」
頑張って。
小さな声で短く言い残したサチ姉は、アスナさんとアマリに一礼してから控え室から出ていった。
「……フォラスさん」
「その話しは後でね」
「はい……」
微妙な空気が流れる中、いよいよデュエルが始まるようで、キリトとヒースクリフを呼び出すアナウンスが辺りに響く。
観客たちの怒号のような歓声がコロシアムを揺らし、周囲の空気が塗り変わる。
「さて、出番だな」
最後のサンドイッチを飲み込んだキリトが、手を払いながら立ち上がる。
表情に余裕はない。 けれど、ワクワクしているのが手に取るようにわかるほど、その双眸は爛々と輝いている。
「戦勝報告を期待してるですよー」
「無茶はしないでね」
背に吊った漆黒の愛剣、エリュシデータの柄に軽く触れ、大きく息を吐くと、キリトはそれぞれの声援に押されて一歩踏み出す。
僕がその背にかける言葉はただひとつ。
「いってらっしゃい」
キリトの返事もたったの一言だった。
「いってくる」
そうして《黒の剣士》は控え室から出ていった。
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