アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 02
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う少し警戒してもいい気がするけど、そもそもここはキリトの控え室だ。 文句を言うわけもなく、まして止めることもできない。
「えっと、キリト。 その……ご飯を持ってきた、よ?」
果たして、扉から現れたのは気弱そうな少女は、控え室にキリト以外がいることに驚いたのだろう。 首を傾げた体勢のまま固まった。
肩辺りで揃えたやや藍色がかった黒髪。 困ったような垂れ目と右目の下にある泣きぼくろ。 淡い青色の落ち着いた雰囲気の服の上から羽織る紺色のマント。 アスナさんのような華もないけど、その分厳しさも一切ない柔和な顔立ち。
そこにいたのは、僕にとっての恩人であり、ギルド《月夜の黒猫団》のメンバー、サチさんだった。
「お、サンキューな、サチ。 ……って、どうした?」
事態を理解していないキリトがまるで危機感なく首を傾げるけど、いかに我が兄とは言えそれは空気が読めていなさすぎると苦言を呈したい。
狭い控え室の中。 いるのはキリトと僕とアマリ。 ここまではいい。 サチさんとは仲が良いので、僕が結婚知っていることを知っているし、今もアマリとは手を繋いでいるので誤解のしようもなくアマリを僕の妻と認識するだろう。 そこで問題になるのがアスナさんだ。
アスナさんは当然のことながら今日も血盟騎士団のユニフォームだ。 そもそもアスナさんは超が付くほどの有名プレイヤーだから、サチさんだって知っているだろう。 そして、キリトが一昨日、一緒にパーティーを組んだと言うことも、多分知っている。 もっと言うなら、昔は一緒に行動していたことも。
さあ、事実を色々と誇張して今の状況を説明しよう。
元カノとの密会中に今カノ襲来。
しかも、元カノとの復縁の噂まで。
……自分で言っといてなんだけど、これは些か修羅場すぎる気がしなくもない。
なんとなくでも状況を察したらしいアスナさん(多分、『ご飯を持ってきた』のくだりで気がついたはずだ。 やれやれ、勘が冴えているのもこうなると考えものだ)の顔は若干引き攣っているし、サチさんはサチさんで硬直から復帰したけど困った顔のまま俯いてるし、明らかに微妙な空気が流れている。
さすがの僕でもこのタイミングでの対面は予想外だったので、どうアクションを起こすべきか迷う。
けど、この場にはモンスターだろうと空気だろうと、全てを纏めて吹っ飛ばす達人がいることを忘れてはならない。
「えとー、この人、誰ですかー?」
コテンと首を傾げて問うアマリに答えたのは、空気が読めない我が兄ではなく僕だ。 と言うか、キリトは視線で黙らせてある。
「うん、えっと、じゃあ紹介するね。 この人はサチさん。 《月夜の黒猫団》って言うギルドのメンバーで、僕にとってはお姉さんみたいな人」
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