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ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
平穏な日々
紅色の策略 01
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そう言えば、こんな感じが昔のスタンダードだったっけ。 なんて感慨に耽りながら、頭の片隅では別の思考を組み上げていく。

 考えるのはもちろん、キリトの彼女さんであるあの人のことだ。
 キリトが血盟騎士団に入れば、あの人はその意味を誤解しかねない。 かと言って事情を正確に説明できるほどキリトの対人スキルは高くないし、そうなれば最悪、誤解したまま身を引くなんて笑えない事態が起こるだろう。
 ヒースクリフの説得もキリトの勝利も諦めている僕だけど、いくらなんでもそれを傍観していることはできない。
 僕から説明することも可能ではあるけど、さすがにそれは僕の仕事ではないし、そもそも首を突っ込むわけにもいかないことだ。

 「アスナさん」
 「なんですか!」
 「ちょっと考え事しながら歩くから、ギルド本部までのナビはよろしくね」
 「え、あ、はあ。 それは構いませんが……」

 色よい返事とはいかないけど、それでも了承してもらった僕は、そのまま思考に没頭するべく、意識を自身の内面に向ける。

 (血盟騎士団への入団がキリトの意思によるものではないと伝える状況の案を検討開始……)
 (ヒースクリフの思惑に沿い、血盟騎士団の利益に繋がる状況の案を検討開始……)
 (最終目標はあの人が誤解しない状況)
 (キリトにとって不本意だと知らせることが大前提)
 (ヒースクリフを頷かせるためには、彼らの利になることが大前提)
 (僕がデュエルに介入する)
 (却下)
 (デュエルが始まる前にヒースクリフを圏外で闇討ちする)
 (返り討ちが関の山。 却下)
 (あの人に事情を包み隠さず説明する)
 (そこまで直接的な干渉はルール違反。 却下)
 (血盟騎士団への入団がキリトの意思によるものではないと伝える状況の案を検討終了)
 (ヒースクリフの思惑に沿い、血盟騎士団の利益に繋がる状況の案を検討終了)
 (案を実行する策を検討)
 (目には目を)
 (歯には歯を)
 (挑発には挑発を)
 (挑発は僕の趣味)
 (挑発は僕の特技)
 (今後の方針を決定)
 (挑発)
 (挑発)
 (挑発)
 (挑発)
 (挑発に決定)





























 「ほう。 これは珍しい客人だ」

 55層の主街区、グランザムにある血盟騎士団本部。 その最上部に位置するヒースクリフの執務室を訪ねた僕とアスナさんを見て、いけ好かない聖騎士様はそう言った。

 「まさかとは思うが、君も血盟騎士団に入るつもりかね?」
 「まさか。 僕は入らない。 今回はちょっとお願いがあってきただけだよ」
 「ふむ。 まあ、かけ給え。 お茶を淹れよう」

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