暁 〜小説投稿サイト〜
Deathberry and Deathgame
Chapter 5. 『あんたを倒して俺は帰る』
Episode 29. Academic Revolution
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綻ばせた。
 SSTAで事務仕事をするようになってから、サチの会ったばっかの時の気弱そうな笑みはなくなり、代わりに素朴な感じの笑顔を浮かべるようになった。シンプルなロングスカートにカーディガンって恰好は、学校で見る司書さんみたいな雰囲気を纏っている。

「えっと、うん、一週間ぶり、かな。この前はご飯食べに来てくれてありがとう。前に比べて少しは上達したと思うんだけど、どうかな」
「少し、どころじゃねえだろ。オメーの料理目当てに毎日行列ができるレベルなんだし、もっと自信持てよ」
「うん、ありがと。これも全部、一護さんのおかげだよ」
「ンなことねえっつの。俺は最初のコツ教えただけで、後は全部自分で頑張ったんだろーが」

 幼馴染なだけあって、思考回路がケイタと似てんのな、なんてことを思いながら、サチのはにかむような笑顔を見返す。陰の無いその表情を見てると、ホントに今が充実してるんだなってのが伝わってくる。

 あの日以来、サチは事務仕事と並行で料理スキルを徹底的に鍛え始めた。
 最初は黒猫団の連中とか、訓練の相手をしにくる俺やリーナにだけ振る舞っていた。だが、ひと月前に料理スキルがカンストした祝いってことでゲリラ的に料理の試食会ってのをやってみたところ、来た奴全員がその味を絶賛。
 その声に押されるようにして、半ば冗談だったはずのサチ食堂が出来上がり、今じゃSSTAの食堂の看板娘(ダッカー談)として、毎日忙しくしてるらしい。
 俺も何度か食べてはいるが、なんつーか、味付けが絶妙だ。流石にレシピは教えちゃくれなかったが、ジャンキーな味付けの多いこの世界の料理と違って、和風で薄味な「家庭の味」って感じがする。食ったヤツがその場で泣き出したとか、サチをおかん呼ばわりした奴がいるとか、そんな根も葉もないウワサも、あながち間違っちゃいねえと思えてくるような出来栄えだ。未だに熟練度九百ちょいで半分惰性でやってる身からすると、少し尊敬しちまう程だしな。

「あ、そうだ。サチ、お前この前来てた弟子入り希望の人、どうなったんだ?」
「前から弟子入りさせてくれって何人か来てたもんなあ。いよいよサチも先生になるのか?」
「え、えっと、一応ディアベルさんが全部取り計らってくれてて、今度、第一回目の講習みたいなことをする、かも」
「「「「おぉーっ!!」」」」

 問いを投げたケイタとテツオ、それにササマルと、あとなんか復活してきたダッカーの声がハモる。それに照れて、や、止めてよみんな、と笑うサチ。それを見てると、コイツがあの夜言っていたことを思い出す。

『『信じることから逃げるな』みたいな強い言葉は私には言えないけど、戦えなくてもできることはあるんだよって、伝えたくて。私がそういう人の助けに、ほんのちょっとでもなれたら、いいのかな……?』


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