暁 〜小説投稿サイト〜
大刃少女と禍風の槍
十節・立ち向かう戦士達
[7/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、恐慌が、ボスフロアに濃く蔓延していく。


(まだだ……まだ……!)


 されど希望すら消えた訳ではない。
 あと一つ、あと一つ何かあれば、プレイヤーの心を一つに出来る。

 ……その最後にピースが思いつかないキリトの顔に、拭えぬ色濃い焦燥が募っていく。


(! ……いや……待て……!?)


 そして、そのピースはすぐ傍に合ることを、思い出した。
 正確には―――皆、ボスに気を取られて忘れていたのだ。


 未だに《ルインコボルド・センチネル》を二体相手にしている、あの人物を。



「『ギイイイィイィィィ!!』」
「『ギュオオオオオオオオッ!!』」

「ハハァッ……」

「『アアアァァァ!!!』」

「リィィ!!」


 ―――否、皆が逃げ回っているうちに近寄ってきてしまった『三体』を相手に、“グザ”が堂々と大立ち回りしている事を。

 一際大きな奇声と鳴き声がフロアに高々響き渡った事で、戦闘へ参加していないプレイヤーの視線は自然とそこに誘導される。



 そして―――絶句した。


「『ア゛ア゛ア゛ァァァ!!』」
「『グルルラアァッ!!』」


 叫びつつ振りだされた二つの得物を、グザは槍を横にし正面から受け止め、一瞬の間隙を置いて槍を斜めに。
 
 急に重心が変わったせいでよろめいて、武器だけでなく体ごと衝突した二体のコボルドは縺れ合ってすっ転ぶも、三体目のコボルドは既にグザの背後へ忍び寄っている。


「『グオオオォォォッ!!』」


 その無視できない重量を持つ武器が大きく振り上げられ―――――


「甘ぇのよ」

 
 グザは逆に後方へ一歩踏み込んで肩越しに槍を伸ばし、柄で敵の片手を打ち払って見せた。片手持ちだという事と武器の重量が災いし、攻撃の不発だけに留まらずたたらすら踏ませる。

 後方を確認する動作も、軽く振り向いただけ。
 一秒も掛ってはいまい。

 グザは槍を回転させつつ持ち替えて、左踵打ちから右回し蹴りの2連続キック。
 更に《コボルド・センチネル》の武器を槍で叩いて初動を遅らせ、一瞬の溜めからの右フロントキックで数歩後方へ弾き飛ばした。


 それでもコボルドがやっとこさ、ふらつく体勢を立て直した時には……グザはもう既に2m近い位置まで近付いている。


「よっと」
「『!?』」


 そこから軽く(かが)んでの足払いで体勢を崩し、下から上へ槍を回転させながら、コボルドの頭を兜越しに連打。
 そんな遊ぶような動作から一気に肉体を躍動させて槍を突き込み―――成す術のないコボルドを転がして転倒状態(タンブル)へと持ちこんでしまった。


「『アアアァァァア!!』
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ