十節・立ち向かう戦士達
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らせていたのだ。
声無く切り上げられて宙を舞ったキリトを見ながら、咄嗟に別個所へアスナは非難しようとする。
「『ガァァアアアアアアアアァァァァッ!!』」
(速いっ……!?)
システムの、この上ないまでの嫌がらせなのか。
其処で更にスピードを増した刀身がアスナの予想を、遥かに超える勢いで真っ二つにすべく襲いかかる。
皮装備ばかりで防御力に乏しい彼女の装備では、クリティカルでも出てしまうと耐えられる保証など何処にも無い。
意識を取られ、振り返ったその一瞬―――――彼女は、『一つ』の刃を視界に映した。
「ふん……ぐうううっ!!」
「! エ、エギルさん……!」
その刃の正体は、B隊リーダー・エギルの両手斧。
C隊を漸く避難させ終え、さりとて割り込む事も出来なかった彼だが……このピンチは余りに単純だったからこそ、ベストタイミングで飛び込む事が出来て彼等の窮地を見事救えたのだろう。
アスナの声から少女である事に一瞬驚いたエギルは、しかしすぐに切り替えて《コボルドロード》を見やる。
「パートナーのとこへ行ってやれ! 壁役は任せろ!」
「……はい!」
「B隊! HP大丈夫な奴はこっちに来てくれ!」
「「「おっす!!」」」
野太く頼もしい異口同音を背後に、スタン状態に陥っていたキリトへアスナは駆け寄ると、急ぎ回復ポーションを取りだして口に突っ込んだ。
「んぼっ!? ……んぐっ……っ……プハッ! エ、エギル! そいつは囲むなよ!!」
「あの時の全方位攻撃か!?」
「あぁ! 囲まなけりゃアレは来ない!」
「OK分かった!!」
エギルにどうにか指示を送ったキリトは、手に握った《アニールブレード》を杖代わりにヨロヨロと立ち上がる。
幾らゲームで痛みが無いとはいえ、喰らった際の衝撃と『死』の恐怖から、如何しても震えを抑えきれないらしい。
手を課すべきか否か、アスナは迷いながら彼の傍に付き添っている。
エギル達は真っ正面からソードスキルを受け止めつつ、通常攻撃で着実にダメージを与え、ポーションを使い尽す事も厭わず盾となって立ちはだかり続ける。
されど……B隊以外は前に出ようとしない。
それどころか、まるで陰口をたたくかの如く、引け腰でただ濁った声色で絶望を吐き出すのみ。
逃げていないだけ、まだマシとしか言えないだろう。
だがそれも当然―――命を失うかもしれない恐怖を湛えた割に合わない賭けに、ディアベルの死を目の当たりにした彼等が乗れる筈もない。
どれだけ動こうとも、立った数人で状況が覆せるはずもないのだと、その考えを根っこから否定できない。
決して拭い去れない恐れが、狼狽が
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