第一部
第二章 〜幽州戦記〜
九 〜軍師たち〜
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翌朝。
昨日と何も変わる事なく、調練が始まった。
「張遼、どうだ? 我が軍の者どもは?」
「せやなぁ。関羽もやけど、趙雲もどないしたん? 昨日よりもえらい動きが軽いで?」
星には無茶をするな、と言っておいたのだが。
身体はまだ辛かろうに、それを感じさせない程、精力的に動き回っているようだ。
「おお、やっておるな」
杖を突きながら、丁原が姿を見せた。
「丁原殿。お加減は宜しいのですか?」
「ああ。あれ如きで寝込む程、ヤワな鍛え方はしておらんよ」
そうは言うものの、やはり顔色は優れぬように見受けられる。
「あまりご無理をなさらぬよう。董卓殿や呂布殿が悲しみますぞ?」
「ふふふ、ワシも老いたものよ。皆に心配ばかりかけておるわ」
自嘲気味に言い放つと、
「ご忠告、痛み入る。せいぜい、気をつけるとしようかの」
「……は。ところで、丁原殿」
「何かな?」
「一つ、伺いたいのですが」
「うむ」
「董卓殿とは、どのような関係でござるか? 董卓殿はおじ様、と呼んでいたようですが」
「月から、聞いておらぬのか?」
「はい。何分、董卓殿とゆっくり話が出来たのも昨日が初めてでした」
「そうか。……土方殿、月が并州刺史、というのはご存じかな?」
「はい」
「実はの。并州刺史はつい最近交代になったのじゃ、ワシにな。月は中郎将に任じられた。まだ、都からの沙汰が来たばかりじゃがのう」
「それで、でござるか。お二人ともに并州刺史、と耳にしておりました故」
「もともと、幼き頃より月の父とワシは交流があってな。血のつながりはないが、ああしてワシの事をおじ、と慕ってくれておるのじゃ」
「なるほど、合点が参りました。では、呂布殿は?」
「奴は西方の出じゃが、あの通り心優しき性格をしておる。本来、戦には向かぬ性分……しかし、武以外に糧を得る術を知らんのじゃ」
「…………」
「それで、武を極める事を思い立ったようじゃ。もともと、天賦の才があったのであろう。文字通り、武の達人になった。そんな次第でな」
「槍術、弓術にも通じているとか」
「本当に貴殿は、よくご存じじゃのう。無論、剣を取らせても超一流。そして、体術にも通じておる。恋が得手とせぬのは、氣ぐらいではないかな?」
「まさに、無双ですな」
「うむ。……だからこそ、ワシは恋の行く末が心配でならぬのじゃ。実の娘でこそないが、ワシは娘同然に思っているからの」
「……無双が故、他者に利用される。ですな?」
「然様。あれはあまりにも純粋じゃ。この乱世で、己の才覚のみで生き抜く事は出来まい」
「…………」
「そして、その力を恐れるあまり、生かしておけぬ、と企む輩も出よう。そうなれば、恋は望むと望まざると、戦うのみ。その末路は……いずれにせ
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