矢矧
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は知っている。
その頃から、私は訳の分からない感情に襲われていた。
この気持ちを私の知っている言葉で表すなら「保護欲」ではないだろうか。
提督の泣いている姿を見ると、今すぐにでも抱きしめてどこかへ連れて行ってしまいたいと思う。
そんな気持ちを抱えて私は日々を過ごしていた。
だが、予想だにしない出来事が起きてしまった。
いつものように部屋へ入ると、提督はいなかった。
だが、机の上に何か紙が置いてあるのに気が付いた。
気になって手を取って、中身を読む。
そして、後悔した。
内容は、艦娘の離反を咎める内容で、提督の無能を延々と批判し続けるものだった。長ったらしい手紙の最後に『貴官を近日中に提督から解任、更に降格させることとなるだろう。』
そう書いてあった。
読んだことを後悔しつつ、手紙を元の場所へ戻そうと思った時、提督が部屋に入ってきた。
提督は私の手の中の手紙と私の顔を交互に見ると、ため息を吐いた。
「読んじまったんだな。ったく、勝手に読んでんじゃねえよ」
いつもならもっと罵倒されるのに、今日は言葉にも力がなかった。
「ま、見えるとこにおいてた俺も悪いんだろうけどよ。矢矧、今日の業務は終わりだ。部屋に戻れ。あと、厨房にいる鳳翔にも行っておけ」
「は、はい。」
そう言うと、提督は何故か軍帽と勲章、階級章を机に置くと、部屋を出て行った。
私は、手紙を畳んで机に置くと、フラフラと部屋を出た。
この時私は気が付くべきだった。
なぜ提督の声が優しかったのか、提督が得たもの、大切な物を自身から離したのか。
彼はこの手紙を読んだときに決意し、決断した。
私は彼をちゃんと見ていなかった。
“小心者”な彼ではあるが、彼もまた栄誉ある帝国海軍の一員であると言う事を完全に失念していた。
「提督、遅いですね」
異常に気が付いたのは、鳳翔だった。
1900時、提督が決めた夕食の時間に提督の姿が無かった。
恐らく手紙の件で色々と悩んでいるのだろう。
「私が呼んでくるわ、食卓に並べるのをお願いしますね」
「はい」
私は鳳翔に食卓を任せ、提督の私室へ向かった。
本来、提督の私室への出入りは秘書艦でも禁じられているが、この場合は仕方がないだろう。
そう言い聞かせながら、ふと気が付いた。
なぜ私は提督の部屋へ行くのを楽しみにしているんだろう。
なぜ私は提督の事を考えるとこんなにも胸が苦しいのだろう。
いくら考えても分からない。
気が付けば、提督の部屋の戸の前に立っ
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