九十八 思案の外
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れているシカマルだが、ナルの憂いを晴らす事も出来ない頭脳のどこが役に立つのかと、彼は自嘲した。
「……でも―――皆、生きてる。それが何よりだ」
思案に尽きて気落ちするシカマルに、綱手はしみじみと伝えた。心底そう思っている彼女の声の響きに、そこでシカマルはようやく顔を上げる。
そうだ。自分も、いのもキバもネジも―――ナルも皆、命に別状は無い。
あの強い音の五人衆との戦闘で命を落とす可能性だってあった。でも結果として、死んだのは敵のほうで自分達はこうして生きている。
今は、それで十分じゃないか。
そう暗に告げてくる綱手の視線を真っ向から受け、シカマルは深々と頭を下げた。同時に、ナルの様子を見に行くように促され、火影室から出る。
ゆっくりしたものから駆け足になってゆくシカマルの足音が遠ざかってゆくのを聞きながら、綱手は机上に放り投げた報告書に眼を落した。
音の五人衆の一人・次郎坊はナルとの戦闘で生き埋めとなり、死亡。
同じく、鬼童丸は途中参戦したヒナタ及びシノに敗れ、死亡。
右近・左近は、身体を張ったいのと共に転落し、崖からの墜落死をサイに確認されている。
君麻呂はネジとの戦闘により、滝壺へ落下し、溺死。
そして多由也はキバとの戦闘後、キバ本人の証言により自決と報告を受けている。
報告書を前に、綱手は改めて手を組み直した。音の五人衆の死亡に疑念を抱いていないわけではないが、なにより、いのの危ない所を救ったというサイの行動が気にかかる。
五代目火影就任前、サスケにつきまとっていたらしいこの少年はどう考えてもダンゾウの部下である。『根』の息が掛かった少年がサスケ追跡部隊の一員たるいのを助けるなんて、そんな偶然あり得るだろうか。
(監視させていたか…。しかしサスケがスパイとして里抜けする事実を奴は知らないはず…)
サスケの隠密任務を知らぬダンゾウが、みすみすサスケの里抜けを黙認するだろうか。最初からサイという少年にサスケを監視していたのなら、すぐ里へ連れ戻すだろう。
以上から、ダンゾウはサスケ追跡部隊が里を出たのに気付いて、すぐさまサイを派遣した可能性が高い。
(ということは、ダンゾウはサスケのスパイ活動に関してはまだ把握していない…)
報告書から視線を外し、綱手は天井を仰いだ。今の彼女にとって、音の五人衆の生死よりもダンゾウの思惑を知るほうが優先事項だった。
彼らが、本当に死亡しているのか。その事実確認をする前に、ダンゾウの動向を探ろうとしていた綱手は知らなかった。
その裏で行われていた、取り引きの事など…―――。
天蓋のように枝を広げる大木。
その草叢の影で、何処かに連絡を取っていたハヤテは閉ざして
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