暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
九十八 思案の外
[1/7]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
恋は盲目、と人は言う。

それは常識では律し切れず、分別をつかなくさせ、理性を失わせる―――不治の病。
その相手しか目に入らなくなって、周りなど視界に映らず。他には目もくれず、ただずっとその人だけを見つめるのだ。

少女もまた、その不治の病の犠牲者であった。


彼女の中では、恋い焦がれるその人が世界の中心で、自分もまた、その人の周りを回っている。
その様はどことなく太陽系を思わせるが、太陽に似通っているのは少女と同班の子であり、好きな相手はどちらかというと、太陽というより月のようだった。
冷たい月の如き鋭さを纏っているその人に、少女は寄り添いたかった。その冷たさを自分が和らいであげたかった。

たとえ、相手が自分のことなど眼中になくとも、どんなに素っ気なくされても。
その人だけを、ただひたすらに少女は見つめる。

やがて、次第に相手からも見つめ返して欲しいと、見返りを求めたくなる。
野望を叶えるのが相手の望みなら、その手助けをする。その人が故郷を捨てるのであれば、ついて行く。

少女は願う。恋い焦がれるその人の傍にいたいと。
その人の為ならば、故郷も家族も捨て去っても構わない、と。

だからどうか、私だけは捨てないで。お願いだから、私をみて。
………―――――サスケくん。




春野サクラはアカデミーに通っていた頃から、うちはサスケを盲目的に好きだった。

同じ七班に決まった時は感激のあまり、もう一人の同班の子の存在など気にも留めないほどである。
当時、アカデミーにおいて優等生とされてきたサクラは、落ちこぼれの波風ナルをどこかしら見下していた。

あの頃のサクラは色々な面で器用だと周りから褒められ、一方の波風ナルは何かにつけて不器用だと周囲から嘲笑されていた。
要領が良いサクラに対し、ナルはいつも敬遠されていた。

いのと出会ってからは、誰からも好かれる自信を抱き始めていたサクラに反して、ナルはどことなく自分の力に自信が無さそうに周囲からは見受けられていた。
幾度となく悪戯を繰り返し、目立とうとするのは自分が弱いから虚勢を張っているのだろうとの噂が流れ、その噂をサクラもまた信じ込んでいた。アカデミーに通っていた当時はナルと会話する機会がほとんど無かったので、ナルの人柄を噂通りだと受け止めていたのである。

アカデミー時代、共に過ごした日々にて、優等生と落ちこぼれは比較対照されるものだ。
同じ班になったのなら、猶更顕著に比べられる。特に同性故、優秀とされてきたサクラと落ちこぼれのナルは常に比較され、サクラはよく里の大人達から声を掛けられた。
「あんな落ちこぼれと一緒じゃ大変ねえ」
そういった言葉を投げられるたび、サクラはナルを慰めていたのだが、内心優越感に浸っていたのも確かだ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ