九節・《狗頭の君主》
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コボルドの動きが鈍る。
……隙と呼ぶには余りに小さく、しかし“切り替わった”事を判断するには十分な緩急。
その挙動を待ってましたとばかりに、そのすぐ横からコボルドの腹部目掛け、濁った紫色の穂先が一瞬の硬直のちに突きだされる。
両手槍スキル妨害技【ジャミング・スパイク】でデバフを付与したグザにコボルドは意識を取られて、彼への報復と言わんばかりに武器を上へ掲げた。
「チャンス……スイッチ!」
「はいよ!」
コボルドの得物が光を宿すのと、グザが飛び退くのはほぼ同時だった。
全身がバネなのかとそう疑いたくなる様な、長距離跳躍を披露する彼の脇をすり抜けたキリトの武器もまた、ペールブルーの眩く頼もしき輝きを灯す。
片手直剣スキル単発技【バーチカル】の垂直切りと、コボルドの袈裟切りは派手なサウンドを上げ正面衝突。
キリトもコボルドも、例外なく威力を殺し切れずにノックバックした。
……彼らの攻撃は、まだ終わっていない。
「スイッチだ!」
「っ! 任せて!」
細剣を構えて突進するのは、今まで回避に徹していたアスナ。
喉元が露わになった体勢のコボルド目掛けて細剣スキル【リニアー】による鋭利な一撃を見舞い、後頭部から回転させて数度ほど転がした。
「グッジョブ」
キリトは転倒状態となったコボルドから一旦距離を取り、通常攻撃で追い打ちをかける二人を見ながら、状況を作り出す事に貢献した彼等へねぎらいの言葉を贈る。
「……貴方達も」
「ヒヒヒ」
……アスナからはちゃんとした返事が来たものの、グザからは悪役さながらの笑声が掛けられ、そのギャップで危うくキリトは躓きかける。
そうこうしている間にコボルドが転倒状態から立ち上がり、再び鈍器が振りかざされるのに合わせてグザが撹乱と妨害、キリトの援護からアスナがソードスキルを決め、見事なコンビネーションでHPを全損させた。
弾き防御していると言っても一番距離が近い為、ダメージが無視できなくなってきたのを確認したキリトは、口で回復POTの蓋をあけ中身を飲む。
舌を苦いレモンジュースと言った何とも言えない味が支配し、それとは正反対な清涼感と喉ごしを持って通り過ぎていく。
己の心に安心感が広がると同時、ある種の希望も広がっていった。
(このまま順調に行けば、本当に犠牲0で行ける―――)
「あんま調子にのんなや」
その希望を持ってボスである《イルファング・ザ・コボルドロード》を見た……正にその時だった。
後ろから、キバオウの声が掛ったのは。
第一声から、キリトはまた嫌味かと判断して―――
「ワイは聞か
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