九節・《狗頭の君主》
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A隊、C隊は下がって待機!」
「「おうっ!」」
「踏ん張れよお前ら!」
己の率いるC隊が下がればもう一つのダメージディーラー部隊が前に陣取り、エギル率いるタンク役のB隊が防御しきったのを確認するや否やスイッチ。
ダメージ効率よりも生き残る確率の重視か、硬直時間の短いスキルと通常攻撃を併用して、着実に四本あるHPバーを削っていく。
ボスと向かい合う者達も、取り巻きと闘う者達も、自分の力を脚に腕に……武器に注いで全力で動き続ける。
出し惜しみなどする筈もない。
そんな彼等を見て、アスナは少なからず驚いていた。
(……あんな化け物を相手にしているのに……死ぬかもしれないのに……脅える事もしないなんて……!)
連携と部隊間の動きの滑らかさ、プレイヤー達から発せられる気炎、そして自分以外のプレイヤーの実力。
プレイヤー側が優位にボス戦を進めるには、どれを抜かしても成り立たないであろう。
だからこそ、彼女は驚きを禁じ得ないのだ。
だが、そんな高レベルプレイヤー達の中でも―――
「っ……スイッ―――」
「スイッチ!」
目の前を駆け抜けていった、黒い少年は格が違った。
アスナが間隙を作り出した瞬間、通常攻撃から淀みなくソードスキルへつなげて、自分達の相手である《ルインコボルド・センチネル》が内一体を葬って見せたのだ。
彼女は思う……彼に何処か引き付けられる訳、それはスピードやパワーなどではなく、このゲームに置いて最適化された行動だからではないか―――と。
かく思うアスナ自身も、思わず震えてしまえるほどに。
キリトの活躍はやはり目を見張るものなのか、前線でHPを回復中なエギルは感嘆からか口笛を吹き、何やら敵意を抱いていたキバオウは苦い顔と驚き顔を一辺に表している。
「お疲れさん……てーのはまだ早いかねぇ?」
「早すぎに決まってるだろ。次の第二波から、徐々にレベルが上がっていくからな」
「ほうほう、そりゃー怖いわな!」
「……ならさ、せめてそれっぽい顔してくれよ……」
されど、別格はもう一人いる―――アスナは己の心の内で、そう付け加えた。
それは今、目の前で緊張感に欠ける言葉を口にし、コレまた緊迫感の欠片もないやり取りを交わす発端となった、刺青半裸の男・グザだ。
このボス戦でこそ目立った活躍はしていないものの、アスナからしてみると彼の槍捌きは、いっそ可笑しいぐらいトンデモないのだ、と言っても良かった。
中距離からの援護を主とする両手武器であり、今回の役割はあくまでヘイト値コントロールやデバフの付与……なのだが、それらを打ち込むタイミングが完璧なのだ。
後ろからチ
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