第3章 黄昏のノクターン 2022/12
32話 闇に堕ちた者達
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が続く。
その静寂を貫くように突然クエストログ更新を報せるサウンドが鳴ったおかげで心臓が飛び出しかけたものの、女性陣が上手くやってくれたことを示す何よりの知らせを聞き届ける。寿命が一気に縮んだ心地さえするが、感謝だけはしておこう。
それから十数分のインターバルを経て、ようやく荷卸し集団が部屋の前を通過して去っていった。積荷を船から受け取ってから指定位置に降ろすまで、二十分弱は要することになる。ヒヨリ達を回収するには不足はないだろう。荷卸し担当のエルフが一本道に差し掛かるより早く、彼等の背後を掻いて通路を突き当たりまで進むと、下階へ通じる階段を発見する。足音が途切れることなくフェードアウトしたことを考えれば、この先に荷を運んだことはほぼ確実だろう。手早く階段を下ると、その先はこれまでの細い通路とは打って変わって広大な倉庫となっていた。やはりこのダンジョン自体が他者に知られていないと思われているのか、見張りは一切いない。そして、左右の壁際には無造作に重ねられた木箱の山と更に奥、正面の巨大な二枚板が一際目を引くものの、この空間のどこかにいる仲間の回収が最優先だ。無音動作を解除して、三度木箱を小突いて鳴らす。
くぐもった音が室内に響くと、ほぼ規則性のない位置にある木箱の蓋が開き、中から仲間達がふらつきながら姿を現す。皆一様に顔色が悪いのだが、苦情は発案者に向けて貰うとしよう。
「燐ぢゃん、ぎもちわ゛る゛ぃ………」
密閉空間で船に揺られ、更にエルフに乱雑な運ばれ方をした彼女達には漏れなく平衡感覚にダメージを受けてしまっているらしく、助けを求めてきたヒヨリの様子からして如何に過酷な状況であったかが伝わってくる。SAOには存在しない状態異常ではあるが、言うなれば《箱酔い》だろうか。
「ヒヨリ、待て。水をやるから落ち着いて深呼吸だ」
「………む゛ぅぅ」
「我慢しろ、ここでぶちまけるなよ?………それと、いい加減移動しないと見付かるぞ。付いて来てくれ」
恐らく最もダメージが深刻であろうヒヨリに肩を貸しつつ、一時的な避難所として利用した休憩室まで、死屍累々と化した女性陣をなんとか運び込む。時間的にかなり際どいものがあって、通路の曲がり角から木箱が見えた時には冷や汗が溢れ出るような嫌な感覚さえしたが、ドアを閉じる瞬間を目撃されてはいなかったのか、それとも不審に思わなかったのか、とにかく素通りしてくれたから事無きを得た俺達は、女性陣の体調を回復するまで小休止を取らせることとした。幸いにもベッドが設けられた部屋、一息つくにはお誂え向きというものだ。
「リンさん、少しだけ宜しいですか?」
女性陣がベッドで回復を図るなか、ドアの傍に寄りかかる俺にティルネルが声を掛けてくる。いつになく深刻な面持ちは、未だ十
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