第3章 黄昏のノクターン 2022/12
32話 闇に堕ちた者達
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ながら、戦士のカラーカーソルを確認すると見事な赤。固有名は《Fallen Elven Novice》とあり、有らん限りの視力を以て確認すると確かにティルネルのような長い耳を有していることが分かる。彼等は全員がエルフということになるのだろうか。
次いで、陸地に散開する戦士に気を取られているうちに桟橋には追跡を続けてきた大型ゴンドラの船上では動きがあったようで、水夫を伴った船頭と、リーダー格らしきエルフが何やら会合を設けていた。彼等の話す内容を何とか聞き出したいところではあったのだが、距離という障壁を隔ててしまってはどうすることも出来ず、積荷に紛れた女性陣に任せるしかない。
しかし、水運ギルドと取引先の管理職はそのままどこかへと場所を移し、いよいよ木箱の荷卸しが始まってしまう。水夫が桟橋に立つエルフに木箱を手渡し、更に奥へと運び込まれてゆく。他の箇所からも木箱を積んでいた為か、膨大な積載量となった木箱はそれだけで山を築いている。
ともあれ、ヒヨリ達が隠れた木箱は手前に積まれていた事もあって、積荷に埋もれることだけは避けたらしい。かなり早い段階でゴンドラから降ろされるのだが、やはり細身には堪えるのか、二人で運ばざるを得ないような木箱が三つほど奥に運ばれてゆく。その最後の一つ、零れ出した殺意の残滓を辿るように、遮蔽物を移りつつ彼等の背後を追うべく、木箱を運び込むエルフの行列の最後尾の背後へ滑り込むように開け放たれた鉄の門を抜ける。
行列で先が見えないが、それなりの長さであろう一本道はこのまま通過するには危険度が高過ぎる。無音動作によって気配こそ悟られていないのだが、ふとした拍子に振り向かれても対処の仕様がないので、やむなく扉側の壁と天井の隅、壁に掛けられた松明の灯りから外れた場所に貼り付き、保護色で闇に紛れることで遣り過ごす。
そして、高所に移動することで視覚から障害物が失せて、一先ずは目に映る範囲で地形の把握が叶ったのは思わぬ副産物であった。どうやら通路の全長はおよそ二十メートル、その先の突き当りから更に左右に道が伸びているようだ。
背後から迫る足音こそ聞こえないが、いつ新手が現れるかも分からないので、最後尾が突き当たりを曲がった時点で床に降りて全力のスプリント。突き当たり手前で左右を目視し、荷卸しの最後尾の姿しかない事を確認した上で、一つ手近な部屋に潜り込む。幾つかベッドが設置されたところを見ると休憩室だろうか。中にエルフや水運ギルドが居なかったことに胸を撫で下ろしつつ、可能な限り薄くドアを開け、外部の音が入ってくるギリギリの状態を保つと、行列の足音が耳朶を打つ。ほぼ雑踏然とした纏まりのない足音はやがて遠く離れて、存在感を増した静寂に溶け込むようにて消え行ってしまう。どこかで足を止めているのか、余韻が静まってから暫くは無音
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ